◇鈴木康弘氏「達眼」馬体診断
マイルの大賞候補も劣化を知らない古古古米!?鈴木康弘元調教師(81)がG1有力候補の馬体を診断する「達眼」。第42回マイルCS(23日、京都)では昨年の優勝馬
ソウルラッシュを
ジャンタルマンタルと共に1位指名した。なかでも達眼が捉えたのは4年連続出走となる
ソウルラッシュの新米(1年目)のように瑞々しい色つやと古古古米(4年目)になっても変わらないずんどう首。その馬体を今年の「新語・流行語大賞」候補になぞらえながら解説した。
1年間の世相を反映した言葉を選ぶ「新語・流行語大賞」のノミネート30語が発表されました。最有力候補は令和の米騒動で政府が備蓄米を放出する中、注目を集めた新語「古古古米」でしょうか。一般的に収穫から3年以上経過した「古古古米」は新米のような色つやが出にくい。長期保存により粒が割れて大きさにばらつきが出やすい。炊き上がりが新米よりも硬くなりやすい。ただし、玄米で適切に保存すれば、おいしく食べられるそうです。
ソウルラッシュはマイルCSに4年連続で出走します。4歳時の初挑戦(4着)を新米になぞらえるなら、5歳時の2年目(2着)は古米、6歳時の3年目(優勝)は古古米、7歳時は「古古古米」でしょうか。それでも、飼養管理が優れているため新米と変わらない状態を保っています。
7歳馬とは思えない瑞々(みずみず)しい体つき。黒鹿毛の被毛が黒光りしています。新米のような色つやがある。岩のように強くて大きい筋肉も落ちていません。首についた分厚い筋肉も健在。6歳時の馬体診断ではその太くて短い首をマイク・
タイソン級と絶賛しました。元WBA王者トニー・タッブスに2回KO勝ちした88年の統一世界ヘビー級
タイトルマッチ。東京ドームのリングサイドで目の当たりにした
タイソンのずんどう首はタッブスをガードごとなぎ倒す
パワーの源泉でした。馬は首を使って走るため、その形状は競走能力に直結します。7歳の「古古古米」になっても変わらないずんどう首はマイル戦で求められる加速力の源泉になっています。
肩、トモの筋肉量もずんどう首に負けていない。「古古古米」みたいな粒のばらつきがなく、前後肢の
バランスがしっかり整っています。本番を1週後に控えて少し余裕のある腹周りも古米、古古米の頃と同じ。今週のスパーリングでひと絞りしてG1のリングに上がれるでしょう。
きつい顔つきは馬体採点で同じ95点をつけた
ジャンタルマンタル、90点の
ガイアフォースにも見られます。3頭ともかまされたチェーンシャンクを気にしているのです。イレ込んでいるわけではありません。
新語・流行語大賞は30のノミネートを選考し、12月1日に決まります。「古古古米」が年間大賞の最有力候補なら、新米時代から4年連続で出走する“古古古米馬”はマイルG1の最有力候補です。(NHK解説者)
◇鈴木 康弘(すずき・やすひろ)1944年(昭19)4月19日生まれ、東京都出身の81歳。早大卒。69年、父・鈴木勝太郎厩舎で調教助手。70〜72年、英国に厩舎留学。76年に調教師免許取得、東京競馬場で開業。94〜04年に日本調教師会会長。JRA通算795勝。重賞27勝。19年春、厩舎関係者5人目となる旭日章を受章。