「世界のYAHAGI」こと矢作芳人調教師=栗東=が今週の
ジャパンC・G1(11月30日、東京競馬場・芝2400メートル)に
シンエンペラー(牡4歳、父
シユーニ)を送り出す。悲願のG1初制覇を目指す愛馬の現状、4年ぶりの勝利を目指す世界決戦への熱い思いを語った。(取材・構成 山本 武志)
ここだけを見ていた。矢作調教師は早い段階から
ジャパンCを「秋の目標」と明言。凱旋門賞も含んでいた今秋の出走予定レースの中で、実績を残す左回り&直線が長いコースで行われる一戦に最も重きを置いてきた。
「
シンエンペラーに合っているレースであることと、季節的に秋が一番走れますからね。まだG1を勝っていないので、どこかでG1を取らせたい。その中で適性的に向いているのは有馬記念より
ジャパンCだろう、ということです」
実際に3歳だった昨年は2着同着。序盤で主導権を握りつつ、勝った
ドウデュースの決め脚には屈したが、中盤からまくってきた
ドゥレッツァを差し返すように伸びてきた。
「うまく乗ったとは思っていない。ちょっと脚を余したかな、と。その辺(まくられた時)の反応の悪さが弱点でもある。もっと早く反応していれば、もっと早く馬体が併さればね。一頭だと遊んじゃうところがある」
雪辱も期す今年は誤算が続いた。始動戦の愛チャンピオンS6着後にぜん息と中程度の肺出血が判明したために凱旋門賞を回避。この症状は尾を引くものではなかったが、今度は帰国時に欧州でウ
エストナイル熱(感染症の一種)が発生したため、日本での検疫期間は通常より1週長くなった。
「今回はなかなか難しいものがありました。検疫が長くなると、調子が悪いというわけではないけど、馬が緩みますよね。(放牧から)帰ってきた時の馬の張りが去年ほど良くなかった。ただ、先週、今週と追い切りの動きはよかったです」
ジャパンCには今まで、のべ9頭を送り出した。何より「世界のYAHAGI」と言われるほど国内外問わない活躍を続ける第一人者。強い思いを乗せる舞台に、今年は世界NO1レーティングの
カランダガンも参戦する。
「うれしいね、楽しいね。やっぱり、JCはこうでないと。個人的には
コントレイルかな、良くも悪くも。(有終Vとなった)21年はプレッシャーがあったね。その後に引退式もあったから」
今年も迫ってきた世界決戦。BCクラシックを勝った
フォーエバーヤング(牡4歳、父
リアルスティール)と同じ藤田晋オーナー、弟子の坂井瑠星騎手とのコンビで、再び高い壁へ挑む。
「フォーエバーに比べるとどうかだが、完成に近づいてきたかなとは思う。今回に関しては有馬にも行こうと思っていて、状態的には有馬の方が上がるかもしれない。ただ、徐々に馬は戻ってきています。あとはJCまでにどこまで戻るかです」
まだ良化途上でも侮れないのが大一番を知り尽くすチーム矢作の底力。上昇カーブを描きつつ、勝負の舞台へ打って出る。