秋G1シリーズの水曜企画は担当記者が出走馬の陣営に聞きたかった質問をぶつけて本音に迫る「G1追Q!探Q!」。世界の強豪と日本馬が激突する「第45回
ジャパンC」は東京本社・後藤光志(29)が担当する。今年参戦する唯一の外国馬
カランダガンの調教を担当するジェレミー・ロベル助手を直撃。「欧州年度代表馬」「参戦理由」「雪辱」の3テーマを問う。
≪欧州年度代表馬≫今年も大物が来た。現在、ロンジンワールドベストレースホースランキングで単独首位に立つ
カランダガン。19日には欧州年度代表馬の勲章を手にしたばかり。正真正銘の“世界最強馬”だ。10月の凱旋門賞をダリズでV、初のフランス調教師リーディングが確定的な名門
グラファール厩舎が満を持して送り出す。
「自分はストレスを感じないタイプ。
カランダガンのことはよく知っているし、調子が良いのも悪いのも分かる。責任は重大ですが継続して調整を続けていきたい」。担当するロベル助手は落ち着いた口ぶり。同馬が2歳の時からコンタクトを取り、関係を深めてきた。「小さい時は個性的で気性が荒く、何回も鞍上が落とされることがあった」と苦笑いで振り返りつつも「去勢してから良い方向に向いている」と力を込める。
欧州年度代表馬が同年の
ジャパンCに参戦するのは、06年
ウィジャボード以来19年ぶり4頭目となる。これまでの最高着順は同馬を含む3着が2回。ロベル助手は「日本馬のレベルは格段に上がっている」と警戒感も示した。
≪参戦理由≫新たな
ビッグタイトルを獲得すべく、いざ日本へ。
グラファール厩舎としては15年
イラプト(6着)、16年
イラプト(14着)、24年
ゴリアット(6着)に続き2年連続4度目の挑戦となる。ロベル助手は「米国のブ
リーダーズCはタイミング的に早く、香港だと遅い。
ジャパンCがピッタリだった」と参戦の経緯を説明する。
海外調教馬として05年アルカセット以来、20年ぶりの優勝がかかる。長年、外国馬が苦しんできた日本の高速馬場については「軽い馬場でも重い馬場でもいい成績を残している。
ジャパンCの馬場は合っているので問題ない」とキッパリ。前走から2F超の距離延長にも「チャンピオンSは(約)2000メートルで(流れが)速い状態から加速したが、(ペースが落ち着きやすい)2400メートルは最適」と力強かった。
≪雪辱≫負けられない理由もある。4月のドバイシーマクラシックでは、今回出走する
ダノンデサイルの後塵(こうじん)を拝して2着。その雪辱を期す一戦でもある。
ロベル助手は「
ダノンデサイルがとてもいい馬だということは分かっている」と敬意を表した上で、「実はドバイは休息期間が終わった段階で100%の状態ではなかった。確かに負けてしまったが、今の状態は100%。日本馬、特に
ダノンデサイルにリベンジする用意はできているので大丈夫」と言い切った。
敗戦を悔しい経験で終わらせない。愛馬は現在、サンクルー大賞→キングジョージ6世&クイーンエリザベスS、英チャンピオンSとG1・3連勝中。「ドバイへの輸送経験もあって、今は調子が良くて食欲もあるし、落ち着いている」と状態の良さに自信をのぞかせた。ランク1位に君臨する今、G1タイトルを譲るつもりはない。「フィジカル面は以前よりも美しくなった。精神面でも3歳の時は難しい性格だったが、4歳になって一つ何か乗り越えた感じで、落ち着いてレースに集中できるようになった」。心身ともに充実ムードを漂わせる
カランダガン。日本の競馬ファンを驚かせる準備はできている。
≪ゲート試験もOK≫
カランダガンは25日午前7時に東京競馬場のダートコースに登場。帯同馬
ルノマドを前に見ながら、キャンター左回りで1周半した。その後はゲート試験にも合格。ロベル助手は「昨日(24日)と同じような運動を行ったが馬の状態はとても良く、食欲もある。ゲート試験も落ち着いてスムーズにこなしてくれた」と納得の表情を浮かべた。
≪取材後記≫今年4月のドバイ出張で取材した
カランダガンと東京競馬場で半年以上ぶりに再会。G1タイトルを引っ提げ、強くなった同馬と会えたのは素直にうれしかった。当時と比べて、明らかに後肢の筋肉がパンプアップ。ダートを力強く捉える脚さばきが印象的だった。良馬場発表ながら草丈が長く
パワーを要したドバイでは非凡な末脚を発揮。そこから一段階、馬体に迫力が増している。
あの時から確実に進化している世界最強馬。日本勢から見れば相手にとって不足はない。付け入る隙はあるのか?気になったのはロベル助手がこぼしたひと言だ。「弱点はゲートを出た時にすぐに加速できないところ。スタートが気になる」。25日のゲート試験は駐立も発走も問題なくこなしたが、本番でどうか。ゲートの話題以外は終始、順調ぶりを強調し、陣営の本気度がひしひしと伝わってきた。近年、日本馬が築いている“牙城”を崩せるか。大一番が待ち遠しい。(後藤 光志)