今年のチャンピオンズカップ・G1(12月7日、中京競馬場・ダート1800メートル)は、どんなドラマが生まれるのか。過去の名勝負は、2008年勝ち馬の
カネヒキリ(ルメール騎手が騎乗)を振り返る。
奇跡の復活―。前身のジャパンカップダート・G1時代。阪神競馬場のダート1800メートルで15頭(
マストトラックは出走取り消し)によって争われた。屈けん炎による2年4か月の休養から復帰して2戦目の
カネヒキリが、直線でインを突いて鋭く抜け出して優勝。JCダート3年ぶりの勝利で、06年2月のフェブラリーS以来となるGI5勝目を挙げ、再び“砂王”の座についた。
この年から阪神に舞台を移した砂の世界決戦。待っていたのは鮮やかな復活劇だった。直線で好位から抜け出した
カネヒキリに外から
ヴァーミリアン、
メイショウトウコンが迫ってくる。勢いは外の2頭が上回っていたが、抜かせない。同期3頭による頭、首差の激しい追い比べを制し、3年前の覇者が鮮やかによみがえった。
道中は好位のインを追走したが、テン乗りのルメールは直線でも迷わず内を選択。「いいスタートを切れたので、ポジション取りは楽だった。アメリカの馬(
ティンカップチャリス)が下がってくるのが分かっていたから動かなかった。その通り内があいたし、直線でもいい動きをしてくれた」期待通りの反応でスパートしたパートナーは、かつて“砂のディープインパクト”と呼ばれた実力を存分に発揮した。
当時、短期免許で来日中だったルメールは、エリザベス女王杯の
リトルアマポーラに続く初コンビでG1・2勝目。「ユタカから距離は
パーフェクトと聞いていたし、状態もよかったので自信を持って乗った。(同じ馬がJCダートを)4年で2回も勝つなんて
ファンタスティック」と“V請負人”が笑った。
06年フェブラリーS以来となる2年10か月ぶりの美酒に角居調教師は感無量の面持ちだった。その8月に右前浅屈けん炎を発症して放牧へ。07年9月に復帰を目指していた矢先に再発し、再び長期休養に。無敗でターフを去った父と同じ病と闘い、2年4か月の休養中に2度も手術を行った王者が“
キセキ”を起こした。「引退という言葉が何度も頭をよぎったが、よくぞ復活してくれた。あの馬のすばらしさに感動しました」この年4つ目のG1勝利をもたらした愛馬をたたえた。
10年に3度目の屈けん炎を発症し、現役を引退。通算成績は23戦12勝(うち地方9戦5勝、海外1戦0勝)。種牡馬入り後は、
アルタイル、
ミツバなどの産駒を出している。その
ミツバは19年の川崎記念(指定交流G1)を勝利。ダートで活躍する産駒が出てきて、これからという16年5月に、けい養先の北海道新冠町の優駿スタリオン
ステーションで、種付け中の事故により死んでしまった。