プロキオンSに出走するタンジブルアセット(撮影:佐々木祥恵)
プロキオンSに出走予定のタンジブルアセット(牡5/根本康広厩舎)について、担当の平目孝志調教助手に取材した。
「先週の時点で体は出来上がっていたから、今日の追い切りは、ポリトラックで短めにやりました。単走だったけど、動きは良かったね。性格はズルいよ(笑)。レースでズルさを見せるね。速く抜け出すとフワッとして、ゆっくり行くと、最後届かないということがよくあるからね。
若い頃は、馬が怖かったみたいで、それでハナに行くことが多かったんだけど、3歳の終わり頃、江田(照)騎手が乗った時に、脚をためる競馬をしてもらったことがあるんだよ。その時は5着だったけど、そのあたりから、馬を怖がる癖も克服できたみたいだね。3歳時と比べると、30キロ近く体重が増えているけど、これは、筋肉がしっかりとついてのもので、成長分だよ。
相手なりに走るタイプだし、今回は好位差しか、ペースが遅ければ、逃げることになるかもしれない。他の馬よりも、うまく立ち回れるというアドバンテージがあるから、競馬はしやすいと思うよ。
それに、この馬、運が良いんだよ。3.11の東日本大震災の時に、南相馬の牧場に放牧に出ていたんだけど助かったんだ。人間は原発事故で避難指示が出ていてから、馬に餌を置いて、避難しなければならなかった。でも馬は、その餌を数日分に分けて食べるなんてことはできないからね。
多分、最初に餌を一気に食べちゃって、その後の数日は、ほとんど食べるものもなくて過ごしたんだと思う。一時はガリガリになって、大丈夫かなと思ったほどだけど、今はこんなに元気だからね。運も良かったんだろうし、生命力も強いんだろうね」
被災しながらも、そこから見事に立ち直って、無事、厩舎に戻ってきたタンジブルアセット。その生命力の強さを、重賞でも存分に発揮して、是非とも上位を狙ってほしいものだ。(取材:佐々木祥恵)