最強馬か、ニューヒロインか。史上初の牡馬と牝馬の3冠馬の対決で、ジェンティルドンナが世代交代を狙う。「あの馬はバケモノ」。ジェンティルの主戦・岩田は最大の敵をこう表現する。国内で8勝を挙げるオルフェーヴル。うち7戦で岩田は同じ時間を共有している。「オルフェのすごさはレースを一緒に乗っている者にしか分からない。宝塚記念なんて、あの馬は押さえながらピューンって行った」とあきれたような表情を見せる。
ただ、強さは認めても白旗を揚げるつもりはない。パートナーの強さを最大限に引き出せれば勝機があるとにらむ。「今回は4キロの斤量差があるし、オルフェに勝てるとしたら今回しかないと思っている。四位さんがオペラオーに出し抜けを食らわしたようなイメージで。バケモノに立ち向かっていくのは楽しみ」。描くのは01年の天皇賞・秋。テイエムオペラオーが抜け出したところを、4、5頭分離れた外からアグネスデジタルが差し切ったシーン。“バケモノ退治”の策を練る。
追い切り前日は栗東坂路を2本駆け上がった。感触を確かめた井上助手は「変わらずいいですよ。食べるものが実になっているから、今は“体が減らないようにしよう”という努力をしなくていい。貫禄が出ている」と成長ぶりに目を細めた。
陣営は口をそろえる。「今回は挑戦者」と。ただ、その壁を超えれば3冠牝馬の称号がひときわ輝きを増すことだろう。「勝てば真の女王になれる」。決意を口にした岩田が4冠へとエスコートする。
提供:デイリースポーツ