まさに悪夢という言葉がふさわしい。スタート直後に、歓声は悲鳴へと変わった。黄色の帽子がゲートから出てこない。2番人気のルーラーシップだ。懸念されていた出遅れは天皇賞・秋やジャパンCとは別次元のレベル。わずか数秒足らずで、馬群とは10馬身以上の差が開いた。必死の追い上げもむなしく、3戦連続の銅メダル。国内制圧に失敗した。
優勝したゴールドシップとの着差は1馬身半+首。出遅れさえなければ-。ウィリアムズは唇をかむ。「スタートが全て。厩舎のスタッフはやれることをやってくれた。見ての通りです。ゲート以外は普通に競馬をできているんだけど…」。陽気な性格で知られる世界の名手も悔しさを隠し切れず、珍しく多くを語らなかった。
陣営のショックは計り知れない。中間は入念にゲート練習を積んで、尾つりロープも実験。本番での使用こそ見送られたが、この日は角居師が自らゲート裏まで付き沿った。可能な策は全てやり尽くした。結果は枠内駐立不良で発走調教再審査が科せられるほどの大出遅れ。「なかなか治らない。コントロールができないものになっている。重症ですね」。戦前に“ライバルはゲートです”と名言を残した指揮官は壁を越えられずに肩を落とした。
提供:デイリースポーツ