逆襲の一撃を放つ態勢は整った。冷たい雨が降りしきる美浦W、午前6時。主戦・横山典を背にしたコディーノが開門直後の馬場へ飛び出した。先導役のフラムドグロワール(3歳オープン)を2馬身ほど前に見てスタート。水分を含んだウッドチップを跳ね上げながら1完歩ごとに差を詰める。直線は内へ。鞍上の手綱はピクリとも動かない。相手の動きに合わせながらも、そのフットワークは実に力強い。最後は馬体を並べてゴールを駆け抜けた。5F70秒3-40秒7-13秒5。さらにその態勢のまま、2角過ぎまで入念なクールダウンで締めくくった。
「予定通り。時計は遅かったが、動きは良かったよ」と見届けた藤沢和師は納得の表情を浮かべる。横山典も「具合がいいのは分かっていたし、動きもいい感じだった」と好仕上がりをアピールした。リフレッシュ放牧を経て中間は6本の時計をマーク。十分過ぎるほどの負荷もかけてきた。近走は足踏みを続けているが、「前走は2回目の中山で落ち着きがあったし、1回ずつ精神的にも成長している。それに本番と同じ条件を経験できたのも良かった」と、主戦は精神面での成長ぶりを伝える。「順調のひと言。現時点での課題はない。あとはしっかり(自分が)乗るだけ」と言ってうなずいた。
6枠(12)番から1冠獲りを狙う。「いい枠だね。スタートがいいし、問題ないよ」と指揮官はうなずく。JRA現役最多の1164勝を挙げ、GIも最多の21勝。輝かしい実績を残してきたが、不思議とクラシックは04年桜花賞=ダンスインザムードの1勝にとどまってきた。「この馬で(初の牡馬)クラシックを。それだけの馬」と以前から公言する。「朝日杯のゴール前、ファンの悲鳴が今も耳に残っている。いつも応援してもらっている。恩返しをしたい」。大願成就へ、61歳の名将は静かな口調で言い切った。
提供:デイリースポーツ