5月のダービー当日に行われた目黒記念。猛追及ばず5着に敗れたタッチミーノットの姿を、柴崎師は目に焼き付けたという。「先生は中山金杯を勝ったあとぐらいから体調を崩してね。厩舎にはたまに来ていたんだけど、競馬場に来たのは目黒記念の時が最後じゃないかな。重賞を勝った思い入れの深い馬だし、一緒に写真を撮りたかったんじゃないか」と吉沢助手。勝利を挙げることはできなかったが、持ち味のしぶとさを発揮して見せ場をつくった。その約1カ月半後の7月13日、柴崎師は天に召された。
同日付で、人馬ともに菊川厩舎へ。タッチミーの次戦は札幌記念に決まったが、その後、今月20日付で旧・柴崎厩舎のスタッフが新厩舎へ移籍することが決まった。「レースが18日で良かった。数日違えば、(今のスタッフで)ここに使えなかったから。今回が本当の最後。いい形で締められたらいいね」。熱い思いを胸に、吉沢助手はこん身の仕上げを誓った。
ここ2年、夏は新潟で戦ったが、今年は北海道へ。涼しい気候に助けられ、函館入厩後の調整は順調だ。「すごくいい雰囲気。7歳でも気持ちは若いよ。メンバーは強いけど、何とかならないかな」。天国で見守る柴崎師へ、勝利をささげる準備は整っている。
鞍上は10年7月に函館で行われた北洋特別(500万下)をVへと導いた四位。「あの一戦が軌道に乗るきっかけだった」と吉沢助手は手腕に信頼を寄せる。手綱を託されたベテランも、1週前追い切りに騎乗して「久々に乗ったけど、馬が立派になったね。このスタッフで臨む最後の一戦。いい結果を出せるように頑張りたい」と気合が入る。直線で前を射程圏にとらえることができれば、見えざる力が最後のひと押しをしてくれるかもしれない。
提供:デイリースポーツ