圧巻の勝利を飾ったオルフェーヴルとスミヨン(撮影:沢田康文)
10月6日に行われる凱旋門賞に向けた3つの前哨戦。そのうちの2つを日本馬が制す快挙が達成された。ニエル賞を激勝したのはダービー馬のキズナ。2年連続の仏遠征に飛び立ったオルフェーヴルは貫録の走りで、フォワ賞の連覇を達成した。
第3Rに組まれた3歳馬限定のニエル賞。欧州各国の3歳強豪が揃うなか武豊騎乗のキズナは単勝7.8倍の4番人気に推されていた。ゲートをゆっくりとでると、道中は後方2番手から。ラビットのプリエンプトが飛ばし、前半の1400mは1分34秒27のペース。キズナは武豊騎手の懸命の左ムチに応え自慢の末脚を伸ばすと、最後はルーラーオブザワールドの追撃を凌ぎ切った。レースの上がりは37秒19。
興奮に包まれたロンシャン競馬場の真ん中で、引き揚げてきた武は馬上から、「見えてきたな」と一人静かに語った。3歳馬が有利とされる凱旋門賞において、ニエル賞はもっとも本番での優勝馬を輩出してきたレースとして知られる。「最高のトライアル。凱旋門賞を勝つことの難しさはよく分かっていますが、ファンのみなさんの思いもしっかり感じていますし、覚悟して臨みます」夢の凱旋門賞制覇へ、大きな希望が広がるレースとなった。
オルフェーヴルの出番は第6Rのフォワ賞。日本の王者は圧倒的な強さで前哨戦の連覇を達成。抜け出してからも追われるところはなく、ベリーナイスネーム以下、海外のGIホースを相手に格の違いを見せつけた。2分41秒47の勝ち時計はニエル賞より約4秒遅かったが、これはペースが遅かったため。(前半1400mの通過は1分41秒68秒) 「あらためて素晴らしい馬だと思った。馬が心身ともに本当に成長しているので驚いた」と、手綱をとったスミヨンは興奮気味に語った。
今年の凱旋門賞は日本勢と対峙する欧州の有力各馬も順調に夏を越し、高いレベルでの激戦となりそうだ。しかし、昨年の苦い経験を糧とした調教の効果で完成期を迎えたオルフェーヴルは、凱旋門賞の最有力馬として君臨する。競走馬としての底知れない奥深さを感じさせるキズナも、叩いての上積みと斤量差を生かし、戴冠のチャンスをうかがう。(取材:沢田康文)