師走を迎えた栗東トレセン。調教から引き揚げてきた各馬は、体から立つ湯気と勢い良く吐き出す息が一群を白いもやで包む。松田博厩舎の一団も例外ではない。その中でハープスターだけ周りの空気が透き通っていた。吐く息は穏やかに整っている。ケロリとしたその姿からは、つい先ほど走った栗東CWの調教内容はとても想像できない。
追い切りは見るからにハードだった。相手も相手。GIII・朝日CCで有力視されるラウンドワールドだ。1000万下でも勝ち負けする3歳のタガノエンブレムも内から参加して、この厩舎ではめったに見られない3頭併せ。前方で飛ばすラウンドワールドに4角で外から並びかけると、直線は3頭並んでの追い比べに。内からステッキの入る先輩2頭を手応えで優に上回り、最後は肩ムチだけで1馬身前に出た。
計時されたタイムは6F80秒1-39秒7-12秒6。「だいぶ絞れてきたな。それでもまだ余裕が残っているとは思うが」。指揮官の口ぶりが慎重なのは真の大器と期待すればこそだ。デビュー2戦は目いっぱいのところまではつくっていない。それでいて新潟2歳Sは圧巻の走りで直線一気を決めた。そして、そこで負かした相手のその後の活躍が、さらに価値を高めている。
今回はじっくり乗り込んできた。「ブエナビスタもジョワドヴィーヴルも抽選対象だったからな。今回は出られることが前提で調整ができたから」。阪神JF3勝の名伯楽も、こと調教過程に関しては過去の勝ち馬と比べて引けを取らぬ自信があるようだ。
「冬毛が目立つ」、「初の右回り」−人気馬だけに不安要素をささやく声も聞こえてくる。「毛ヅヤ?よう言われるけどな。気にしてないよ。これが普通。それに普段の調教は右回りだからな」。絶対的な自信があるのだろう、トレーナーはそんな外野の声もシャットアウトしてみせた。
提供:デイリースポーツ