良血トゥザヴィクトリーの2012、POG名人たちの評価は!?/赤本『クロスレビュー』

2014年05月27日 19:00

POG名人たちが、話題の良血馬たちをチェック!(写真はポルトドートウィユ(父ディープインパクト、母ポルトフィーノ))

『POGの達人』誌上で展開されていた「ドラフト有力馬クロスレビュー」。今年は「netkeiba.com」にて皆様にお届けできることとなった。関東馬5頭、関西馬5頭のラインナップは、いずれも期待の大きい血統馬ばかり。果たしてレビュアーはいかなる判断を下すのだろうか?


【関西馬】
オリエンタルアートの2012
ステイゴールド×オリエンタルアート
牡 池江厩舎予定

須田鷹雄の評価→○
 本誌では◎にしたが、山元に行ってから体が減ったあたりを見て、ここでは○に一段下げた。とはいえダメというわけではなく、ドラ1候補からハズレ1位候補(残ってないだろうけど)にしたくらいの感じ。昨秋見たときは意外なほど大人しかったのに、ここへきて良くも悪くもこの血統らしくなってきた印象。あくまでハイリスクリターンな血統とは認識しておきたい。これをドラ1で行くなら、2位は堅実タイプを指名したい。

栗山求の評価→○
 偉大なドリームジャーニー、オルフェーヴルの全弟にあたる超良血。「ステイゴールド×メジロマックイーン」は現代を代表するニックスで、他にゴールドシップ、フェイトフルウォーが出ている。活躍馬はいずれもノーザンダンサー系のクロスを持っており、そのサポートによってニックスは完成するのだと思われる。ただ、配合的には申し分なく素質は抜群でも、本格化まで少々時間が必要かもしれない。

吉田竜作の評価→◎
 もう説明不要の血統。馬体の造りなどもオルフェーヴルによく似ている。この時期にしては馬がよすぎる気もするが、それもアラ探しというレベル。池江調教師が絶賛するのもよくわかる。早期デビューのメドも立っているのだから、欠点がないといってもいいだろう。

スカイディーバの2012
ディープインパクト×スカイディーバ
牡 池江厩舎予定

須田鷹雄の評価→…
 予想が当たるかどうかは分からないが、セリで最高価格馬になった時点で、敢えて消してみようと思っていた。当歳時は良くも悪くも母の父スカイメサの雰囲気が出ており、今も骨格を基準にするとパワーが前に出ているタイプに思える。例えばダート馬ならダート馬で別に良いのだが、この馬のなかに秘められている芝馬としての良さとダート馬としての良さが打ち消し合ってしまうようなことがあるとちょっと怖いので、初志貫徹の無印。

栗山求の評価→△
 母スカイディーバはフリゼットS(米G1・ダ8f)を勝った一流馬。母の父スカイメサはほぼダート専用種牡馬で、2代母の父アンブライドルド、3代母の父ジェネラルアセンブリーも硬いタイプだけに、ディープインパクト産駒でありながらパワーが前面に出た配合となっている。ストームキャット内包のディープ産駒ではあるが、キズナやアユサンのような芝向きの素軽さは期待できそうにない。ダート、洋芝、道悪向き。

吉田竜作の評価→△
 シルエット自体はいいし、バランスも取れていると思う。ただ、かなり雄大なディープインパクト産駒という点がやはり引っかかる。母系も砂っぽい感じだし。潜在能力はあるのだろうが、体の芯に力が入るようになるには時間がかかるのでは? POG向きではないような。

タッチングスピーチ
ディープインパクト×リッスン
牝 石坂厩舎予定

須田鷹雄の評価→◎
 馬についてはどう考えてもいい馬だと思う。牧場で見たあと産地馬体検査でもう一度見たが、前後の馬とは歩いてくるときの身のこなしの柔らかさが全然違う。細かい肢勢だとか言おうと思えば言えるが、外貌上の特徴にリスクと考えられるほどのものはない。唯一の不安は母の父サドラーズウェルズ。もし、このクロレビで栗山さんが「大丈夫」と判定しているようならば、私の◎はさらに強い確信を伴ったものとなる。

栗山求の評価→○
 母リッスンはフィリーズマイル(英G1・芝8f)の勝ち馬で、近親には活躍馬多数。文句なしの良血だ。しかし、「ディープインパクト×サドラーズウェルズ」という直接配合は過去6頭がデビューして勝ち上がりはわずか2頭。あまり走っていない。ただ、馬体が抜群に良く、日本向きとはいえないデインヒルダンサーを父に持つ半姉アスコルティが現在4戦2勝と好成績なので、早めに能力が開花するようならかなりの器である可能性も。

吉田竜作の評価→○
 前出の母スカイディーバとは対象的に、こちらは中型で筋肉質なタイプ。これがディープ牝馬の走るパターンかと思う。いくらか胴が詰まり気味にも映るが、マルセリーナやハープスターもそういう傾向はあった。不安視する必要はないだろう。強いて言うなら、この母の父との組み合わせに成功例が少ないことか。

ポルトドートウィユ
ディープインパクト×ポルトフィーノ
牡 高野厩舎予定

須田鷹雄の評価→◎
 馬の良さは本誌でさんざん書いた通り。もうひとつ、全く科学的でない理由でこの馬に期待している。それは「競馬の神の計らい」。なにもなければ角居厩舎に行っていたはずの馬が、師がこの世代を取る、取らないの話があって、高野厩舎に行った。こういう事件というか出来事があったときには往々にしてそこに極端に走る馬が出る。「本来なら角居」シリーズの中で、最も長打が出そうな馬といえばやはりこの馬だろう。

栗山求の評価→◎
 2代母が年度代表馬に輝いた女傑エアグルーヴで、グルヴェイグの4分の3同血。「父ディープインパクト、2代母の父トニービン」というパターンはハープスターと同じ。「ディープ×トニービン」は馬がゆるく完成も遅くなるが、トニービンを1代下げて間に硬い血を挟むと、うまくバランスが取れて晩成傾向も改善される。配合は文句なし。唯一の懸念は舌を縛って調教していることだが、レースでは問題ないと考えたい。

吉田竜作の評価→◎
 ディープ産駒としてはちょっと見ないタイプに思える。しかしながら、丸みのある体つきは、どちらかといえばエアグルーヴの産駒にありがちな傾向ではないか。となれば、POGでも安心して指名できそう。名門出身のスタッフが多い、高野厩舎の腕の見せどころだろう。

トゥザヴィクトリーの2012
キングカメハメハ×トゥザヴィクトリー
牝 角居厩舎予定

須田鷹雄の評価→▲
 トーセンさんはけっこう後まで厩舎を決めないことも多いので、遅れて角居厩舎に落ち着いたことはリスクではないし、お互いにとってメリットもあった。しかも角居厩舎はこのあと比較的馬房繰りが楽にもなる。一方、フェアリードールの血統は「すごく強い」から「デビューできない」までが、ほぼ均等な確率で起きる傾向があり、しかも牝馬はリスクがより高い。◎級の活躍も無印級挫折もありうるので、平均して▲と考えた。

栗山求の評価→◎
 母トゥザヴィクトリーはエリザベス女王杯の勝ち馬で、繁殖成績も優秀。本馬の全兄トゥザグローリー、トゥザワールドはいずれも重賞を勝った。全姉トゥザレジェンドがイマイチだったのは同じ牝馬だけに気になるが、配合的にはケチのつけようがない。距離は万能なので桜花賞もオークスも行ける。

吉田竜作の評価→▲
 個人的には好みの馬体。血統などを見なければリストの上の方に入れていると思う。ただ、この母と父で現時点の馬体重が450kg前後というのは微妙かも? それぞれの特徴があまり出ていないようにも感じられる。ただ、今年の角居厩舎は2歳馬が少ないぶん、この馬をかなり優遇できるはず。文字通りの英才教育で大化けという可能性も考えられる。

【関東馬】
ディアウィンクの2012
ステイゴールド×ディアウィンク
牡 二ノ宮厩舎予定

須田鷹雄の評価→▲
 本誌では△だったが、ここへ来ての評価が上がっているようなので、クロレビでは一段上げて▲とした。母ディアウインクは配合というよりは種牡馬のポテンシャルを素直に引き出している印象で、そう考えれば走らなかった兄姉も「ロックオブジブラルタルのせい」「ディープスカイのせい」で説明がつく。ただその代わり、ステイゴールドに戻ったからといってまたG1級が出るというわけではない。総合的に見て▲△が妥当かと。

栗山求の評価→○
 宝塚記念を勝ち、凱旋門賞でも2着となったナカヤマフェスタの全弟。母はデインヒルを抱え、リボー系のヒズマジェスティ2×4というクロスを持つ。天皇賞・春を連覇したフェノーメノときわめてよく似た配合パターン。本質的には晩成型だが、兄は2歳時に東京スポーツ杯2歳Sを勝っており、POG期間中にも十分稼げるタイプだろう。

辻三蔵の評価→○
 ナカヤマフェスタの全弟にして、社台ファーム生産馬。2歳5月で兄よりひとまわり大きい490キロ台と馬格があり、二ノ宮厩舎のハードトレーニングに耐えられる体力がありそうだ。秋デビューを目指して調整を進めていくようだが、現時点でマイナス材料はなく、同産駒らしからぬ安定感が魅力。

パピーラヴ
ディープインパクト×ラヴアンドバブルズ
牝 国枝厩舎予定

須田鷹雄の評価→△
 ダービー馬の全妹ということでセリでの価値も高まるが、POGもセリも「小当たりの後の大当たり」を当てることが重要なのであって、「大当たりの後の小当たり」は本物の馬主にとっては高値掴み、POGプレイヤーにとっては上位枠の消費になりうる。関東のディープ牝馬は中山の馬場がどうなるかによっては苦戦リスクがあるし、ノーザン育成の牡馬?社台育成の牝馬、という条件替わりで偉大な兄の影を追うのもあまり気が進まない。

栗山求の評価→◎
 ダービー馬ディープブリランテの全妹。リファールとバステッドのクロス、ミスタープロスペクターとヌレイエフの組み合わせなど、好パターンが詰め込まれている。全兄弟のディープブリランテとゼウスバローズのスケールの差は、馬体重の差がそのまま表れたものといえる。ディープ産駒はやはり大きいほうが走る。本馬はゼウスバローズと同程度の馬格のようだが、牝馬なのでこれで十分。

辻三蔵の評価→△
 全兄姉は競走人生が短く、ハブルバブルがオークス後、ディープブリランテは3歳夏の英国遠征を最後に引退を表明した。ひとつ上のゼウスバローズもソエに悩まされて3月から休養に入っている。体質の弱さがついて回る血統だけに、クラシック路線を無事に戦える体力があるのか心配だ。

ダイワスカーレットの2012
ハービンジャー×ダイワスカーレット
牝 国枝厩舎予定

須田鷹雄の評価→…
 最初に断っておくが、無印だからといってなにか悪い噂があるというわけではない。こういう血統なので取捨をはっきりさせた。ハービンジャー産駒は初年度産駒(現2歳)の当歳時に高く評価され、1歳時にゴツすぎるといって評価が下がり、今年になって意外と動くということで盛り返してきた経緯がある。本馬は1年前の評価を引きずっているようなシルエット。調教タイムを見るまでは真価をはかりかねる。

栗山求の評価→…
 母は女傑ダイワスカーレット。種牡馬として成功しているダイワメジャーをはじめ近親には活躍馬が多数。母は交配種牡馬が伝えるスピード能力が産駒の出来に直結するタイプ。チチカステナンゴの子は走らず、キングカメハメハの子はそれなりに走った。ハービンジャーはスピード不足が懸念されており、配合的にも重厚さが目立つので、スピード面で苦しむことになりそうだ。ダート路線か。

辻三蔵の評価→△
 半姉ダイワレジェンドは素質の高さに体力はついてこなかったが、父がハービンジャーに替わり、逞しさを増した印象を受ける。ただ、重厚感あふれる馬体からは桜花賞向きの軽さが感じられず、活躍の場は馬力が必要な冬の中山か。フェアリーS、アネモネSを使えば楽勝まで考えられるが、クラシックに結びつかないのはもどかしい。

スモークフリー
ディープインパクト×スモークンフローリック
牡 戸田厩舎予定

須田鷹雄の評価→○
 馬そのものの迫力はすごいし、動きも良いとのこと。500キロを遥かに超えるディープインパクト産駒というのも珍しいが、小さくてやきもきするよりはいいかとも思う。またデカくても重苦しい、もしくは足が遅そうというニュアンスは全くない。半姉タカラフローリックは苦戦しているが、もともと晩成ぎみな血統のところを千葉セリに向けて無理をしたことが響いたのかも。こちらは最初からじっくりやっているので不安はない。

栗山求の評価→△
 母スモークンフローリックはダート8〜9ハロンの米G2、G3を6勝した活躍馬で、繁殖牝馬としても北米時代にカナダのG3勝ち馬を産んでいる。母の父スモークグラッケンはダート短距離向きだが、父がディープインパクトで2代母がグリーンダンサーなので芝の中距離タイプだろう。それなりの走りは期待できるものの、トップクラスまで行けるという予感は湧かない。

辻三蔵の評価→△
ディープインパクト産駒らしからぬ500キロを越える好馬体。毛色、血統の違いはあるが、半姉のワイルドフラッパーに雰囲気がよく似ている。社台レースホースで戸田厩舎といえば、交流重賞5勝のシビルウォーが思い浮かぶが、なぜかイメージがダブる。クラシックと言うよりはダート重賞路線で息の長い活躍をしてくれるように思う。

ダリシアの2012
ハーツクライ×ダリシア
牡 堀厩舎予定

須田鷹雄の評価→…
 アニマルキングダムの下くらいじゃ全く騒がなくなったあたり、日本競馬の偉くなったもんですわ。といった話はさておき、ダリシアは打率系の繁殖牝馬というより一発タイプだったような雰囲気がある。そもそもアカテナンゴ肌との組み合わせで走っているのはディープインパクトやアグネスタキオンという、SS系の中でもキレキレの種牡馬たち。ネオ(3歳の兄の父)?ハーツは多少前進ではあるが、指名にまでは及ばない。

栗山求の評価→△
 母ダリシアは芝2000mの独G3を制覇。「アカテナンゴ×ダンシングブレーヴ」という中距離血統で、ダンシングブレーヴはサンデー系全般と好結果を残しているのでハーツクライとの相性も悪くないだろう。ただ、ハーツ産駒は晩成傾向があり、ヨーロッパ色の強い牝馬との配合は完成が遅くなりがち。クラブ馬として出資するのはいいとしてもPOGではエンジンが掛かる前に期間終了、となる危険性はある。

辻三蔵の評価→○
バイワールドカップを制したアニマルキングダムの半弟ということもあってか、日本で生まれた兄2頭は早々にダート路線に転向したが、瞬発力重視の調教を行う堀厩舎なら芝向きの切れ味を引き出す可能性はある。スタミナ血統のベルキャニオンをダービーを見据えて東京向きの馬に仕上げた堀厩舎の手腕に期待したい。

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