アップトゥデイトに熱い視線を送る林満明騎手(撮影:大恵陽子)
今週末14日(土)、中山競馬場で中山グランドジャンプ(J・GI、障直芝4250m)が行われる。昨年末の中山大障害ではアップトゥデイトが後続を10馬身以上離した大逃げを打ち、王者オジュウチョウサンと熱戦を演じた。ゴール前でオジュウチョウサンが差し切って障害重賞8連勝を飾ったが、中山グランドジャンプではこの2頭が再戦する。
11日(水)朝、林満明騎手はスタンド2階で双眼鏡越しに熱い視線を送っていた。見つめる先にいたのはアップトゥデイト。角馬場でのウォーミングアップからCWコースの追い切りまでを見守ると、「OK!絶好調。馬はいいから、あとは俺だね」と笑った。
年末の中山大障害に続き、今回も大逃げ宣言が出ているという噂がトレセン内に流れている。それを聞いた林騎手は「やべーな、違う作戦を考えないと(笑)」とおどけた後、「やっぱりあんなレースしかないね」と逃げを示唆した。
自身は障害レース2000回騎乗達成での引退を表明しており、障害ジョッキー部屋に掲げられた“マジック”は今朝、「7」になっていた。「最近はゼッケンにサインを書く時に、通算何鞍目かっていうのも書くようにしているんです」という。ゼッケンに「2000」と書く時が鞭を置く時になるのだろう。残りわずかとなったレース。中山グランドジャンプも「アップトゥデイトの具合がめっちゃいいんですよ。今回、チャンスやね」と、2015年中山グランドジャンプと中山大障害を制覇した実績馬の騎乗に全身全霊をかける。
一方、打倒・オジュウに燃えるのはアップトゥデイトだけではない。昨年の中山グランドジャンプ2着のサンレイデュークは、4コーナーでオジュウチョウサンに並びかけるところまでいった。「騎手人生で一番興奮した」と振り返る難波剛健騎手は、同馬の中山巧者ぶりをこう話す。「スタミナがあるので中山グランドジャンプのようなタフなコースはもってこいなんです。バンケットも上手にこなしますからね」。通称“大障害コース”を使用する中山大障害と中山グランドジャンプは過去に7走し、掲示板を外したのは2013年中山大障害7着のみ。
「馬もコースを経験して理解してきています。昨年のようにオジュウチョウサンに近いポジションで回ってこれたらな、というイメージですが、縦長の展開になるとちょっとツラいかもしれません。10歳というあたりがどうかですが、前走(阪神スプリングジャンプ)よりは上積みはあります。2強にちょっとでも追いつけるようがんばりたいですね」
中山グランドジャンプには他にもアップトゥデイト・佐々木晶三調教師が「オジュウチョウサンとアップトゥデイト、2頭ともに勝ったことのある唯一の馬」と警戒するニホンピロバロンなど実績馬が出走予定。王者オジュウチョウサンが勝利し、障害重賞9勝の新記録樹立となるか、あるいはそれを阻止する馬が出てくるか。週末が待ち遠しい。
(取材・文・写真:大恵陽子)