水準以上の時計をマークしたジャミールフエルテ(撮影:井内利彰)
先週の日本ダービーを勝ち、6955頭の頂点に立ったワグネリアン(栗東・友道康夫厩舎)。その戦いが終わった翌週、来年の日本ダービーを目指して、メイクデビューが始まる。4月上旬には出走頭数が揃うか心配になるくらいの入厩頭数だったが、今では番組によって除外の可能性もありそうなくらい。
6月2日(土)に行われる阪神芝1600mは手頃な頭数になりそう。昨年この番組を勝ったケイアイノーテック(栗東・平田修厩舎)が今年のNHKマイルCを制覇している。2013年はレッドリヴェールが3連勝で阪神JFを制したり、2011年に勝ち上がったアヴェンチュラが秋華賞を制している出世レースだけに、今年はどの馬が勝ち上がるのか楽しみなところだ。
【6月2日(土) 阪神芝1600m】
◆ジャミールフエルテ(牡、父オルフェーヴル、母プリティカリーナ、栗東・大久保龍志厩舎)
2016年セレクトセールにて1億円の高額で取引された馬。4月14日にノーザンF空港から入厩しているので、ゲート試験に合格すれば、一旦放牧へ出されると思いきや、ここまでしっかりと乗り込まれている。個人的にこの馬に注目した追い切りは5月2日。坂路4F53.1秒と2歳新馬にしては水準以上の時計をマークしたが「指示は55秒くらい。無理しているわけではなく、自然とスピードが出た感じ」と大久保龍志調教師のコメントで、これはかなり動くといった感じ。
坂路だけでなく、5月23日にはCWでC.ルメール騎手が騎乗して6F80.5秒という時計。5月25日にはゲートから1Fだけしっかりと出しており、初戦を迎えるにあたって万全の調教態勢だろう。
◆イニティウム(牡、父ハーツクライ、母ゴールデンドックエー、栗東・須貝尚介厩舎)
七夕賞など重賞2勝のアルバートドック、芝で4勝を挙げているリライアブルエースの半弟。この2頭はいずれも新馬勝ちできなかったが、兄とは違った仕上がりの早さが武器。5月17日の坂路では4F52.6秒をマークしており、そこまでは追うごとに時計を詰めてきて、デビューに向けて着実に上昇している印象を受ける。
ただ、5月23日の坂路は少々地味。時計の4F54.7秒もそうだが、併せた相手が馬なりに対してこちらは一杯。相手が追い切りでは滅法走るフュージョンロックだったこともあるので、これで鍛えられたという見方でもよいのかも知れない。なお、鞍上はM.デムーロ騎手が予定されている。
【6月3日(日) 阪神芝1400m】
◆アンラッシュ(牝、父ノヴェリスト、母キュンティア、栗東・橋口慎介厩舎)
母キュンティアは橋口慎介調教師の父、橋口弘次郎元調教師が管理し、阪神牝馬3歳S(現阪神JF)で2着。半姉のオディールも弘次郎厩舎で管理されて、阪神JFが4着とGIにあと一歩のところまで迫っており、その血統が父から子へと受け継がれているだけに、本馬も当然注目すべき存在だろう。
追い切りを開始した当初はさほど目立つ動きではなかったが「仕上がり早で初戦から動けそうなタイプ」と同調教師がコメントしていたように、5月23日の追い切りでは好時計をマーク。レースでも騎乗予定の藤岡佑介騎手が跨り、4F52.7秒、2F24.8秒と全体も終いも速い時計だった。まずはオディールがファンタジーSを制したのと同じ芝1400mの距離でどんなパフォーマンスを見せてくれるか。
◆シングルアップ(牡、父キンシャサノキセキ、母ラフアップ、栗東・寺島良厩舎)
叔母に函館芝1200mで新馬勝ちし、函館2歳S、ファンタジーSともに2着だったラッシュライフがいる血統から仕上がり早がイメージできる。その通り、普段の坂路調教ではすぐに15-15になるくらい、現時点でしっかり動けるパワーがついている印象。時計自体は目立っていないが、中身はきっちり出来ているのだろう。
5月24日はレースでも騎乗予定の松山弘平騎手が跨って、CWでの併せ馬。3馬身ほど追いかけていたが、4コーナーでは楽々と追いつきそうな勢い。ゴール前で手応えが見劣ったのは経験値の浅い新馬だから。パワフルな走りは魅力的で、スタートを決めて前々でレースを運べばあっさりという可能性も十分にある。
(取材・文:井内利彰)