能力の高さが際立っていたミツバが連覇(撮影:武田明彦)
レースの流れをつくったのは、補欠から繰り上がって函館・マリーンSから連闘で臨んできたヨシオ。スタートして200mほどですぐに隊列が決まると、1〜2コーナーを回るあたりでは見るからにスローペース。岩手競馬で公式に発表されるラップタイムは上りの4Fと3Fだけで、そこから計算すると1200m通過が1分15秒6で、最後の800mが47秒9。この数字を見ても、前半スローに流れての上り勝負だったことがわかる。
前日に行われた1200mの岩鷲賞も、先行した2頭が順序を入れ替えてゴールしたように、この週末の開催の盛岡ダートは前残りの馬場。加えて前述したようなスローペースでは、ヨシオがマイペースの逃げに持ち込んでという競馬だった。それだけに、そのヨシオをねじ伏せるように力任せに差し切ったミツバの能力の高さは際立っていた。ヨシオが最後の600mを35秒8で上っているところ、ミツバの35秒2は、まさに圧巻だった。
ミツバの勝因は、能力の高さに加えてコース適性の高さというべきか。盛岡のダートで行われるマーキュリーCや南部杯は、予想の段階で「リピーターが活躍する」ということがよく言われるが、今回のミツバは、レース運びまで昨年とそっくり。前半は、前で集団を形成した中央有力勢のうしろを追走、3コーナーあたりで差を詰めにかかり、外からまくるように、追って追って、叩いて叩いて、ゴール前で差し切った。
スパッと切れる脚を使うタイプではなく、ジリジリと長く脚を使うスタミナタイプ。それだけに坂のある盛岡コースが合っているのだろう。昨年はJBCクラシック(大井)でコンマ2秒差の3着、チャンピオンズCでコンマ4秒差の6着という惜しいレースがあったが、GI/JpnIで勝ち切れないのは、超一流馬に比べると最後の一瞬で使える脚が少し足りないからと思われる。
人気を二分したフェニックスマークと、4コーナーからは馬体を併せての追い比べになるかとも思われたが、フェニックスマークはそこから伸びる脚がなく、2着のヨシオから4馬身離れての3着。4連勝でオープンのブリリアントSまで制していたが、さすがにGI/JpnIで上位を争ってきたミツバとは経験の差があった。
ブリリアントSでフェニックスマークの2着だったザイディックメアは3コーナーから追い通しとなって、まったく力を発揮できなかった。
経験の差といえば、地方馬の中では期待の高かった2頭、ドラゴンエアルが4着で、エンパイアペガサスは7着と明暗が分かれた。ドラゴンエアルも昨年とほとんど似たようなレースぶりだった。道中はミツバと同じような位置を追走し、直線では中央有力勢の争いに食い下がった。昨年が勝ったミツバから1秒差の5着で、今年は1秒2差の4着だから、昨年同様に持てる力を発揮した。
一方のエンパイアペガサスは、前述のミツバやドラゴンエアルをすぐ前に見る位置を進んだが、4着のドラゴンエアルからも1秒離されての7着。直近の盛岡ダートでは、6月4日に1800mの初夏特別(A一組)を勝っているが、そのときは1000m通過1分3秒2というペースで差のない4番手を追走し、抜群の手応えのまま先頭に立って押し切っていた。レースの上り3Fが37秒8のところ、エンパイアペガサスは37秒6。
それが今回は同じ良馬場で、1000m通過はほとんど同じ1分3秒台。それでいて距離は200m延長し、上り35秒台の勝負となっては、レースの質が一段階も二段階も違う。エンパイアペガサスがこのレベルの相手と互角に戦うには、そうした相手との経験値を上げていく必要がある。