逃げの手に出たこの年の菊花賞馬マヤノトップガンが最後まで先頭を守り続けた(撮影:高橋正和)
前年の有馬記念でワンツーを決めた2頭、ナリタブライアンと
ヒシアマゾンが2番人気、1番人気に支持された。
この年、古馬戦線は両馬の天下になると目されていたが、現実は茨の道だった。
ナリタブライアンは、年明け緒戦の阪神大賞典を単勝1.0倍の支持に応えて圧勝したものの、その後に股関節の故障を発症。その影響から、復帰後は精彩を欠き、天皇賞・秋を12着、ジャパンカップを6着と続けて掲示板を外す惨敗を喫していた。
ヒシアマゾンも脚部不安でレースに出ることなくアメリカ遠征より帰国。復帰戦の高松宮杯で5着に敗れ、13戦目にして初めて連対を外してしまう。秋になりGIIを連勝して復調を示したものの、ジャパンカップではランドの後塵を拝し2着。古馬GIに手が届かないまま、この有馬記念を迎えていた。
ナリタブライアンの復活か。
ヒシアマゾンの悲願か。それとも第3の馬の台頭があるのか?
レースは菊花賞を制した上がり馬・マヤノトップガンが意表を突いた逃げの手に出る。タイキブリザードとジェニュインが先行集団を形成し、ナリタブライアンは6番手、
ヒシアマゾンは9番手を進む。
道中でじわりとポジションを上げた武豊・ナリタブライアンは、絶好の手応えで2番手に押し上げて4コーナーを回る。しかし、追われてから伸びを欠き、逆にマヤノトップガンとの差は開いていく。結局、そのまま前に行った2頭、マヤノトップガン、タイキブリザードが粘りこみ、ナリタブライアンは4着。後方から差を詰めた
ヒシアマゾンも5着まで押し上げるのが精一杯だった。
なんとも言えぬざわめきの中、田原成貴の右手が高々と上がる。まさに「タバラマジック」と呼ぶのがふさわしい、鮮やかな逃亡劇だった。