キャロットC

【クイーン賞回顧】鞍上の好判断でダイアナブライト/斎藤修

2021年12月02日 18:00

移籍初戦でクイーン賞を制したダイアナブライト(撮影:高橋正和)

 JRA勢はダート牝馬では実績上位のマルシュロレーヌ(BCディスタフ他)、テオレーマ(JBCレディスクラシック他)、レーヌブランシュ(レディスプレリュード他)らが抜けてというメンバーだが、3・4歳のこれからが期待できそうな4頭が参戦してきた。しかしこれらをマイペースの逃げに持ち込んで翻弄したのが大井の7歳馬サルサディオーネ。ところがその厳しい流れに乗らずに差し切ったのが、中央から川崎への移籍初戦のダイアナブライトだったという、スタートからゴールまで見応えたっぷりの一戦だった。

 内目の4番枠に入ったサルサディオーネが難なく逃げに持ち込んだのは予想されたとおり。これをぴたりと追走したのが、リネンファッションウェルドーンエリザベスタワーという中央の有力勢。果たしてペースはどうかと見ていたら、サルサディオーネは3コーナーで手応え十分のまま後続を離しにかかった。これはサルサディオーネの完璧な勝ちパターン……と見ていたら、道中離れた中団追走から4コーナーで一気に差を詰めてきたのがダイアナブライトだった。直線を向くとサルサディオーネに馬体を併せないようすぐに進路を外にとって伸びると、クビ差とらえたところがゴールとなった。

 淀みのないマイペースで逃げられたときのサルサディオーネを牝馬が負かすのは難しい。何しろ牡馬一線級相手の日本テレビ盃を逃げ切ってしまったほどだ。早めから競りかけていってオーバーペースになれば共倒れになってしまうし、かといって鈴をつけにいく馬がいなければ楽々と逃げ切りを許してしまう。今回、好位の有力勢は無理に競りかけていったわけではないが、初ダートがどうだったかというエリザベスタワー(13着)は別にしても、リネンファッションが8着、ウェルドーンが10着に沈んだということでは、直後で追走していった馬たちには厳しいペースだったのだろう。

 その厳しい流れに乗らなかったのが、ダイアナブライトと、差はついたものの3着に入ったプリティーチャンスだったといえる。

 ダイアナブライトが前半先行勢についていかなかったのは、移籍初戦で手探り状態ということもあっただろうし、そもそも単勝20倍の6番人気という気楽さもあっただろう。何より「強い馬たちだけで競ってもらって、僕が虎視眈々と狙おうという騎乗を心がけた」という笹川翼騎手の判断だった。そして最後のクビ差は、馬体をサルサディオーネに併せにいかなかったという、いずれも笹川騎手の好判断が見事に当たった。

 好判断といえば、このタイミングでの地方移籍という関係者の決断も見事にはまった。中央で賞金をそれほど稼いでいないダートのオープン馬は除外対象になることも少なくなく、また地方の牝馬限定のダートグレードも出走枠が限られ、なお狭き門だ。

 中央から地方への移籍というと“都落ち”のような印象があるが、ことダート路線においてはその考えは古い。サルサディオーネもダートグレード初勝利は大井移籍後だったし、ダイアナブライトも移籍していなければ重賞タイトルを得られたかどうか。

 ダイアナブライトの次走は東京シンデレラマイルかTCK女王盃になるようで、さらにエンプレス杯にもチャンスがあるにしても、牝馬は6歳3月までで引退というクラブの規約通り来春に引退してしまうのはもったいないような気がする。ただ、キャロットファームの規約を見ると、「地方入厩予定馬である牝馬は、運用を継続する場合があります」(要約)という記述もあるので、それが適用される可能性はどうなのだろう。

 サルサディオーネが刻んだラップは、逃げ切った昨年と、まるで機械のように似通っている。

 2020年クイーン賞
 11.9-11.4-12.5-12.3-12.4-12.3-12.6-12.8-13.2

 2021年クイーン賞
 11.9-11.0-12.2-12.1-12.4-12.5-12.8-13.0-13.5

 これがパサパサの良馬場ならまた違っていたのかもしれないが、昨年が稍重で今年が不良馬場。昨年のサルサディオーネの勝ちタイムが1分51秒4で、今年それを差し切ったダイアナブライトの勝ちタイムはまったく同じ。そして今回のサルサディオーネはコンマ1秒遅いだけ。枠順と不良馬場はサルサディオーネに味方しただろうが、それにしてもトップハンデで、ゴール前は一杯になりながらも大きくバテることはなく、3着のプリティーチャンスには5馬身差をつけたのだらから、負けて強しという内容。何がなんでもという逃げ馬としてはほぼ完璧なレースだったのではないか。ただし、金沢のJBCレディスクラシックでも能力を発揮できず、右回りはこれまで一度も3着以内がないように、好走条件は左回りの船橋か川崎の1600〜1800mに限られる。

 今回、JRA勢で掲示板内は、後半に脚を残していたプリティーチャンスの3着だけ。12番人気で4着のディアリッキー、10番人気で5着のサルサレイアは、プリティーチャンスよりさらにうしろからの追走だった。昨年もサルサディオーネを追走した馬たちは着外に沈み、2〜4着馬は中団よりうしろを追走した馬たちで、そのうち2頭は人気薄の地方馬だった。よほど能力差のある馬でもない限り、今のサルサディオーネを真っ向勝負で負かすのは難しいという結果をあらためて示した。なお、サルサディオーネの半妹サルサレイアも2年連続で掲示板を確保した。

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