「大阪杯・G1」(2日、阪神)
 2番人気の
ジャックドールが鮮やかな逃げ切りVでG1初制覇を飾り、春の中距離王者に輝いた。手綱を取った武豊はJRA・G1通算80勝をマーク。54歳19日での快挙達成で、岡部幸雄元騎手が保持していた同G1史上最年長優勝記録を更新。19歳7カ月23日の同G1最年少記録の持ち主でもあるレジェンドの輝かしい経歴に、また新たな伝説が刻まれた。1番人気の
スターズオンアースは鼻差届かず2着だった。
 満開の桜を背後に、黄金の馬体がターフで踊った。武豊の手綱に導かれた
ジャックドールが悲願のG1タイトルをつかんだ。「ジャックの力を引き出すことができてうれしい」。
キタサンブラックで制した17年をほうふつとさせる鮮やかな快勝劇。千両役者がまたしてもやってくれた。
 スタートを決めると迷わずハナへ。1〜2角でやや力むところを上手になだめ、淡々とラップを刻んだ。1000メートル通過が58秒9。馬場状態も勘案し「普通の馬ならきつくなるペース」をあえて選んだ名手の策だった。直線に入ると徐々に背後から足音が迫るが、強烈な向かい風も切り裂き先頭でゴール。「G1に届く力のある馬だなと周りも僕も思っていた。何としても結果を出したかった」。前走の香港C7着の悔しさを最高の結果で返した。
 鞍上はJRA・G1は80勝目。同G1史上最年長記録を更新する54歳19日での快挙達成だ。19歳7カ月23日の最年少記録で菊花賞(スーパークリーク)を制してから35年。前人未到の大記録に「年がバレるのでね。照れくさい」とはにかんだが、「記録を自分で更新できるように頑張りたい」と勝負師の炎は消えていない。
 抱擁を交わした藤岡師も「さすがは武豊だなと思いました」と破顔する。競りで一目ぼれし、オーナーから預かり受けた思い入れのある期待馬だけに「よくG1までね。どうしても勝ちたかったから。やっと勝てた」とホッと息をついた。
 今後について指揮官は「秋の天皇賞が大目標」と明言。その
ステップとして宝塚記念も選択肢にあるという。全14戦が2000メートルだが、完成期に入った今なら照準は広がる。ついにタイトルを手にした令和の逃亡者。その行く先は見逃せない。