04年の天皇賞(春)を制したイングランディーレ(ユーザー提供:シカダワキノリさん)
およそ2年半を経て、京都競馬場にGIの蹄音が戻ってくる。4月30日(日)に行われる天皇賞(春)(4歳上・GI・芝3200m)にちなみ、名勝負をプレイバック。本稿では2004年の同競走を振り返る。
勝利したイングランディーレは父ホワイトマズル、母マリリンモモコ、母の父リアルシャダイという血統。父、母父ともにスタミナに溢れた配合である。
■格言通りの逃げ切り勝ち
「長距離戦は騎手で買え」「長距離戦は人気薄の逃げ馬」とは、競馬界で昔から云われる格言。その最たる例が04年の天皇賞(春)だ。名手の巧みなペース配分と、展開を味方に付けた逃げ切り勝利。今でも“神騎乗”として、たびたび話題に上がる。
同年の天皇賞(春)には豪華なメンバーが揃っていた。前年の菊花賞と有馬記念で2着に入り、阪神大賞典を制したリンカーンが筆頭格。さらに、2冠馬ネオユニヴァース、菊花賞馬ザッツザプレンティ、同年秋に古馬3冠を達成するゼンノロブロイで4強を形成。一部には5連勝で駒を進めてきたシルクフェイマスも入れて5強とする見方もあった。
イングランディーレは10番人気(単勝76.0倍)と伏兵の一角に過ぎなかったが、隠れた実力の持ち主であったことは付け加えておきたい。前年にはダイヤモンドSと日経賞を連勝。その後はダートに転じてブリーダーズGCと白山大賞典を制し重賞4勝を挙げていた。いくら近走が少々不振とはいえ、後になって思えば楽々逃がしてはいけない相手だったのだ。
レースは実に痛快な逃げ切り勝ちとなる。スタートすると横山典弘騎手がイングランディーレの大きな馬体を押して押してハナ。最初のゴール板を過ぎるあたりで、既に5馬身近い差がついていたが、1コーナーに入るとさらに加速して後続との差を開いていった。一方で4強は、お互いをけん制したのか、はたまたペースが速いとみたか後方に構えたまま。
そうこうしているうちに中継映像では収まりきらないほどの縦長馬群になっていた。イングランディーレから2番手までは約20馬身。「イングランディーレの一人旅」という実況をバックに、ただ一頭だけ淀の急坂を軽快に越えていく。
3コーナー過ぎ、場内がざわつく。「異変」に気づいた後続勢が必死に追いすがるが、勝負は既に決していた。直線に入っても逃げ脚は全く鈍らず、名手とイングランディーレは高らかに笑う。7馬身差を付けての圧勝だった。