4月半ば、以前から個人的に応援していた馬が中央競馬の競走馬登録を抹消されました。名前は
プリンスリターン。理由は屈腱炎の再発です。一度目の発症から1年3カ月ぶりに復帰し、今年の東京新聞杯-大阪城Sと順調にレースを使われていただけに、その知らせには少なからずショックを受けました。
関係者にとってはならなおさらでしょう。管理していた加用師は「走る馬にはつきものだから。しょうがない」とベテ
ラントレーナーらしく割り切ってはいますが、やはり無念さが言下ににじみます。今後は地方に活躍の場を移す予定だそうで、「勝負根性もあって本当にいい馬だった。まだまだ走れると思う。ダートで頑張ってほしいね」とこれまでの感謝を込めてエールを送ります。
担当していた前田厩務員にとっても思い出深い1頭。「最初は緩い馬かと思ったら、走ったときのフォームがすごくきれいでした」。その素質を示すようにデビュー勝ちして、続く函館2歳Sを3着。3歳時にはシンザン記念2着、アーリントンC3着と好走しました。本格化を迎えた4歳に夏の小倉からオープン3連勝を飾りましたが、いざこれからというときに屈腱炎が襲いました。
「最初はちょこっとの腫れだったんですが、
エコーを撮ってもらったら、がっくり。次は重賞へという時でしたから。本当にショックでしたよ」。それでも、牧場の懸命のケアもあって完治。栗東トレセンでは、強過ぎず、弱過ぎず。苦心しながら調教のあんばいを考え、慎重に慎重を重ねて調整を続けてきました。そんな矢先に、2度目の屈腱炎。「もっと活躍できると思っていましたから…。歯車がかみ合いませんでしたね」。悔しさが口をつきます。
ちなみに前田厩務員は引退馬のサポートを行うTCCの活動にもボランティアで参加しており、トレセン内の有志とともに去勢手術を行う馬の世話などもしています。「個人的に引き取りたかったんです。本当に賢い馬ですから、乗馬にも向いていると思います。地方でも引退したら引き取りたいなです」と馬に対する情熱、愛情に溢れるホースマンです。
一方で、「競走馬としても理想的なんです。追い掛けても頑張るし、追い掛けられたら抜かれたくない馬ですから」とほれ込む逸材なだけに、まだまだやれるとも信じています。新たなステージに歩んでいく
プリンスリターン。再び輝きを放ってくれるはずです。(デイリースポーツ・島田敬将)