東西の2歳馬重賞にスワーヴ旋風が巻き起こる。「第58回札幌2歳S」で注目を集めるのが2歳サイヤーランキング首位を走る新種牡馬
スワーヴリチャードの超大物産駒
パワーホール。父譲りの体形、気性と瞬発力で来春へ勝ち名乗りを上げる勢いだ。「第43回小倉2歳S」も同馬の初年度産駒
ドナヴィーナスが万全の臨戦態勢を整えた。
子は親を映す鏡という。競走馬時代の
スワーヴリチャードを思い出させる筋肉質でスラリと脚長の馬体が近づいてくる。札幌競馬場の馬道をゆったりとした脚取りで歩き続ける
パワーホールの乗り運動。荒々しい短距離馬だった母の面影はない。その穏やかな歩様もおとなしい性格で知られた父の姿を鏡のように映し出していた。
「昨日(水曜)の追い切りに乗ったノリさん(横山典)も“おとなしい馬だな”って言ってました。カイバはめちゃめちゃ食べるのでやりやすいですよ。追い切りの翌日でも食欲が全く落ちません。お父さんの勢いに乗りたいですね」。担当の堂本助手は馬房に戻った
パワーホールに頼もしげな視線を向けた。
初年度産駒がJRAで11勝を挙げ、2歳馬サイヤーランキング首位を走る
スワーヴリチャード。優れた種牡馬は自身に似た産駒を出す一方、交配した繁殖牝馬の特長を受け継いだ子も送り出すという。小倉2歳Sに出走する
ドナヴィーナスのような母(
スパイチャクラ)譲りのピッチ走法の短距離馬も出せば、
パワーホールのように自身に似た大跳びの中長距離馬も送り出す
スワーヴリチャードは一流種牡馬の条件を満たしているのだろう。
「スワーヴの子が1年目からこんなに走るとは思わなかったが、うちの馬は将来G1に行きそうな雰囲気を持っている」と語るのが
パワーホールを管理する昆師。札幌新馬戦では最速の上がり(ラスト3F34秒5)で後続を4馬身突き放して逃げ切った。ゴール前2Fは11秒2│11秒1の瞬発力。父譲りの切れ味も示した。「最後の100メートルは流していたからね。追っていたら10秒台が出ていただろう。馬場から引き揚げてきた時は息も戻って平然としていた。そんな馬はめったにいない。デビュー前から抜けているなと思っていたが、久々に凄い馬に巡り合えた」と絶賛する。
子は親を映す鏡。
パワーホールは18年大阪杯、19年
ジャパンCを制した父と二重写しになる超大物産駒だ。