JRAは9日、07年度のJRA賞馬事文化賞に、木村李花子氏著「野生馬を追う」と城崎哲氏著「カリスマ装蹄師 西内荘の競馬技術」を選出したことを発表した。受賞作、受賞者の詳細は以下の通り。
◆受賞作1
「野生馬を追う」(東京大学出版会)
【受賞者(著者)の略歴】
木村李花子(きむら りかこ)
59年神奈川県生まれ。81年東京農業大学農学部卒。01年名古屋大学大学院生命農学研究科 博士課程を修了。馬の博物館学芸員を経て、現在は馬事文化研究所所長を務める。専攻は動物行動学。
【受賞作の概略】
動物行動の研究を志した著者が、家畜化以前の馬の姿を求めて、再野生化した馬の群れを観察、馬の行動の意味を解き明かしつつ、その都度生まれる新たな疑問に誘われるように、北海道・根室市沖の無人島から大西洋上のカナダの島、そしてアフリカのケニヤへ、インドへと研究の歩みを進め、再野生馬、シマウマ、ロバと対象を広げつつ行った問題提起をわかりやすくまとめたものであり、ある時は無人島で野生馬と起居を共にし、またある時はインドの漂泊民と行を共にして、馬の社会についての斬新な問題提起を行った興味深い作品。
【木村李花子氏のコメント】
「作品内容として、馬だけでなくロバなども対象としていますが、馬事文化賞の対象作品として評価して頂いて大変うれしいです」
◆受賞作2
「カリスマ装蹄師 西内荘の競馬技術」(白夜書房)
【受賞者(著者)の略歴】
城崎哲 (じょうさき てつ)
59年栃木県生まれ。科学技術誌のスタッフライター、競馬雑誌編集者を経て、現在はフリーランスライター
【受賞作の概略】
ディープインパクト号の脚元を支えた西内荘氏にスポットをあて、馬を走らせるまでの知られざる装蹄師の仕事を描いた作品。騎手や調教師といった、競馬において人目に立つ人々ではなく競走馬の脚元を護る装蹄師に着目し、競馬の奥行きの深さを世に知らしめる作品。
【城崎哲氏のコメント】
「地道に競馬に関わってきたことがこの賞の受賞につながったと思います。馬場(コース)の取材を行っているうちに、今回の作品内容である装蹄技術にいきつきました。受賞できて本当にうれしいです」
馬事文化賞は日本の馬事文化に貢献のあった個人(団体)に贈られる賞で、06年度は映画「雪に願うこと」と、岩崎徹氏著の「馬産地80話 日高から見た日本競馬」が受賞。過去の受賞者には、血統評論家の吉沢譲治氏や故・戸山為夫調教師、小説『優駿』の著者宮本輝氏、映画『シービスケット』の著者ローラ・ヒレンブランド氏らが名を連ねている。