<京都11R・天皇賞春>レースを制したヘデントール(左) (撮影・亀井 直樹)
【池江泰郎 匠の解説】ジョッキーの駆け引きが浮き彫りになる長丁場。最初から最後まで淡々と流れるようではつまらないが、向正面から激しく動きがあったので競馬の醍醐味(だいごみ)はファンに伝わったのではないだろうか。
向正面からの攻防を回顧したい。丹内君が
マイネルエンペラーでロングスパートの策に出るや、しばらくすると鮫島克駿君の
ジャスティンパレスも呼応して先行集団へ。3番手の位置で構えていた
サンライズアースを含め、3頭が3〜4角は火花を散らすようにひとかたまりになったので、その瞬間、私の視線は直後に張り付いていた武豊君の
ショウナンラプンタに向いた。天皇賞・春9勝目か!?と思ったが、そこからまだ二転三転する攻防が続くのだから実に見応えがあった。従って掲示板を占めた上位5頭は力を余すことなく戦ったと思う。敬意を表したい。
ヘデントールが「勝つべくして勝った」と言えるのは、脚力と有利に向いた展開にある。道中は中団の内ラチ沿いで温存し、前述のように有力馬が消耗覚悟でやり合った攻防を真後ろでじっと見届けるや、満を持して直線でスパート。最後は
ビザンチンドリームが強襲し、詰め寄られたが頭差であれ立派なG1勝利。
鞍上のレーンは活字的には“G1請負人”と称されるだろう。状況判断で言うなら3角から少しずつ内ラチを離れて外に進路を求めた操縦が光ったが、それも一流のジョッキーであれば普通の手綱さばき。要は
ヘデントールがラストにあれだけの脚を繰り出せるほど強かったのだ。ある血統評論家が「スタミナは(母の父)ステイゴールドの血が源になっている」と評していたが、それには私も同調し、うなずきたい心境である。(スポニチ本紙評論家)