オジュウチョウサンのラストレース 石神深一騎手が闘っていた重圧

2025年07月10日 16:00

オジュウチョウサンと石神深一騎手(2021年撮影)

◆スポーツ報知・記者コラム「両国発」

 障害で数々の金字塔を打ち立てたオジュウチョウサンがターフを去り、2年半がたった。名牝(ひん)アーモンドアイに並ぶG1級9勝。重賞タイトルは史上最多の15勝。中山グランドジャンプで同一重賞最多の5連覇を果たすなど、JRA最優秀障害馬に5度も輝いた名ハードラーだ。

 その全重賞勝利の手綱を執ったのが石神深一騎手(43)。オジュウが11歳で現役を退くまで信頼関係を築き主戦を務めた、まさに人馬一体という言葉がふさわしい名コンビだった。その鞍(あん)上が「ドキドキした」というレースがある。6着に終わったラストランの22年中山大障害だという。負けたレースを挙げたのは意外だった。

 レース後に引退式が予定されていた。私はオジュウが勝って有終を飾るかもしれない、と純粋に勝負を楽しんでいた。だが、石神は「無事にゴールさせなきゃいけない」という重圧とも闘っていた。「どれだけ脚元が丈夫な馬でも何があるか分からない。(他馬に)巻き込まれる可能性もありますし。終わった後の引退式というのは騎手としてはかなり過酷。できないというのは避けたかった」

 障害は跳んで、着地して、立て直して加速して…と、平地に比べて馬にかかる負担が大きい。だから勝負にいきすぎれば、不測の事態に巻き込まれるリスクも上がる。予想は騎手の心理を読むこともファクターの一つだが、石神の感情を推し量ることはできなかった。今後は違った角度からの“気づき”も磨きたい。(競馬担当・石行 佑介)

 ◆石行 佑介(いしごう・ゆうすけ) 1998年入社。レイアウト担当を経て19年11月に中央競馬担当。直線が短いトリッキーなコースを予想するのが好き。

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