現役最多のJRA通算1110勝。うちG1・22勝を含む重賞70勝を積み上げてきた国枝栄調教師(70)=美浦=が、来春に定年を迎える。数々の名馬を送り出してきた名伯楽“最後の秋”は見逃せない話題が続く。
まず注目されるのは、名牝
アーモンドアイの初子
アロンズロッド(牡3歳)だ。左膝骨折で今春の休養を余儀なくされたものの、今月10日に美浦へ帰厩。国枝師は「北海道からの輸送後も問題はなく、脚元も大丈夫」と安どの表情を浮かべる。2月以来の復帰戦は10月の東京開催が予定されているが、「体に身が入った感じで顔つきも大人びてきた。うん、この秋は
ポンポンと勝ち星を重ねてほしいね」と飛躍のシーンを描く。母を彷彿とさせる白い
シャドーロールが再びターフを沸かす日は近い。
秋の反撃をにらむ古馬勢も忘れてはいけない。G2・3勝の実力馬
シックスペンス(牡4歳)は、南部杯(10月13日・盛岡)を視野に入れて調整を進めている。初ダートとなるが「脚元や蹄はだいぶ安定してきた。新しいカテゴリーに挑戦することだし、大谷翔平みたいに二刀流で
ブイブイ言わせたいね」と、メジャーMVP級の活躍に期待を寄せた。また、今年に入って不振が続く
ステレンボッシュ(牝4歳)には「最近は自分から競馬をやめてしまっている感じ。何とか、しまいまで頑張れるようになってほしい」と桜花賞馬の奮起を期待した。
一方で、
アーモンドアイの2番子
プロメサアルムンド(牡2歳)が新潟で初陣Vを飾ったものの、レース後に右前膝骨折で戦線離脱-。あの時の国枝師の落胆した姿は忘れられない。全治半年以上の診断が下ったため、国枝厩舎所属で次戦出走できるか不透明だが、「
アロンズロッドもそうだけど、次の厩舎にいい形でバトンを渡せるようにしたいな」と穏やかな笑みを浮かべる。
「あと半年か。まあ、気負わず頑張りますよ。人馬ともに健康第一でね」。
アーモンドアイをはじめ数々のG1馬を育て上げながら、そのひょうひょうとした“国枝節”は最後まで変わらない。大きな話題となりそうなのが、3冠牝馬
アパパネの子
アマキヒ(牡3歳)で挑む菊花賞だろう。悲願の牡馬クラシック初制覇なるか-。関東が誇る名伯楽の集大成となる秋シーズン、最後の秋に刻まれるドラマに熱い視線が注がれる。 (デイリースポーツ・刀根善郎)