「巨漢馬」と聞いてパッと思い出すのはどの馬だろうか。答えは人それぞれだが、オールドファンならヒシアケボノを挙げる人も多いはず。95年のスプリンターズSを制するなど、90年代半ばの短距離路線を盛り上げた快足馬。今回は彼が重賞初制覇した95年のスワンSを振り返る。
ヒシアケボノは父Woodman、母Mysteries、母の父Seattle Slewの血統。3歳下の半弟のアグネスワールドも海外G1を2勝する名ス
プリンターとなっている。2歳秋にデビュー。芝1600mやダ1200mなど、様々な条件を試されながら勝ち切れなかったが、3歳夏から芝1200mに転じると水を得た魚のように覚醒した。未勝利から1500万下まで4連勝。その後は重賞に挑み、マイルの京王杯AHが3着、ダートの東京盃が6着だったが、三度目の正直をかけてスワンSに参戦した。
単勝7.3倍の4番人気だった一戦、ファンも半信半疑といった感じだったが、芝の短距離に戻ればヒシアケボノは強かった。大外14番枠からスタートを決めて、好位の外を追走。3戦ぶりのタッグとなった角田晃一騎手との息もぴったりだ。手応え良く直線に向くと、残り200mで先行勢をかわして先頭へ。あとは後続を引き離す一方だった。556kgの巨体を揺らしながら、2着の
ノーブルグラスに4馬身差をつけて1分19秒8のレコード勝ち。まさに圧巻のパフォーマンスで初タイトルをつかみ取ったのだ。
次走のマイルCSでは惜しくも3着に敗れたが、これは距離が敗因だった。年末のスプリンターズSでは1番人気に応えて、堂々のGI初制覇。存在感でも実力でも、ス
プリント界の頂点に上り詰めたのだった。