併せ馬で先着するエネルジコ(左、カメラ・高橋 由二)
◆第86回菊花賞・G1(10月26日、京都・芝3000メートル)
第86回菊花賞・G1(26日、京都)の最終追い切りが22日、東西トレセンで行われた。栗東滞在の関東馬
エネルジコが、CWコースで鋭く伸びて2馬身半先着。水納愛美記者が分析した。
最後の1ハロンが脳裏から離れない。
エネルジコの最終追い切りは、全てが一級品だった。重心の低いフォーム。前肢の伸びに、後肢が地面を蹴り上げる力。そして
スピード。めったに生で見られない、関東馬の追い切り。栗東に滞在中だからこそ、この走りを見られたのだから、自分が幸運に思えた。
サルサロッサ(6歳障害オープン)を4馬身追走。4角で内から並びかけると、直線半ばではスッと前に出た。あとは突き放すだけ。6ハロン83秒5、ラスト2ハロンは11秒9、11秒3で2馬身半先着と、数字を見ても優秀だった。
後に「なるほど」と、ある記憶がよみがえった。追い切り前日の21日、調教をつけている佐藤助手から聞いた話だ。「運動ではグダグダしているけど、コースに出ると違う馬みたいに体がギュッと締まる。速いところに行ったときのフォームが、グッと沈んで柔らかい」。ラストの伸びは、この話の通り。1週前追い切りに騎乗したルメールが、走りを四輪駆動のSUVに例えたのも納得。体は大きくないが、機動力や安定性は並大抵ではない。
青葉賞を勝った後、体調が整わず日本ダービーを回避したように、体質の弱さが課題。高柳瑞調教師は「ダメージをすごく引きずる馬なので、その後の変化を見ながら健康状態を保って競馬に行きたい」とやはり慎重な姿勢だ。それだけに早めに栗東入りし、既に環境に慣れたのが安心材料。美浦と同様のコンディションで調整できている。
終始、控えめなトーンだった指揮官も、3000メートルには「折り合いもつく馬なので、何とかこなしてくれるんじゃないか」と前向き。この日の動きを見ても不安は感じなかった。レースでどんな走りを見せるか、一層楽しみだ。(水納 愛美)