◆スポーツ報知・記者コラム「両国発」
夢よ再び―。競走馬の引退で、こんな原稿を書くことが多い。ただ、競馬記者歴も20年以上。1頭の競走馬のデビュー、勝ち上がり、大舞台への出走が難しいことがより分かるようになった。「夢は夢のままか…」と思うことが増えた気がする。
そんな中、わずか2年で“奇跡”のつぼみに出会った。
マルガという白毛の牝馬だ。姉は同じく真っ白な馬体で、23年秋の引退までG13勝を挙げた
ソダシ。JRAで1000頭に1頭未満の割合でしか存在しない白毛の馬体は常に注目を集め、ニューヨーク・タイムズで「希代の牝馬が競馬場で輝いている」と取り上げられるほど、海も競馬の枠も超える存在だった。
ソダシがデビューした20年はコ
ロナ禍で、無観客開催など競馬場の入場制限が続いた。「
ソダシを見て、皆が元気になってくれれば」と須貝調教師が繰り返したように、白馬が弾む姿はまるでアニメの世界。一人でも多くのファンに生で見てほしかったと今でも強く思う。
ただ、
マルガが現れた。デビュー戦は姉の
ソダシと同じ週、同じ函館でレコードV。続くアルテミスSでは5着に敗れたが、挫折を乗り越える強さで成長を続けた姉の歩みを考えると悲観することはない。何よりデビュー前から「乗り味は
ソダシ以上」という声を何度も聞いたほどの素質馬だ。
須貝師が「皮膚が薄いんだ」と笑みを浮かべる馬体は、同じ白でもほんのりピンク色。来春の桜花賞出走となれば絵になるだろう。当然、周りは満開の桜とファンの大歓声。その瞬間を楽しみに待ちたい。(中央競馬担当・山本 武志)
◆山本 武志(やまもと・たけし)1999年入社。10月で競馬記者歴21年目に突入。