ルガル(左)に騎乗した杉山晴紀調教師は、エリカエクスプレス騎乗の泉谷楓真騎手(レースは武豊)とコミュニケーション(カメラ・高橋 由二)
◆第50回エリザベス女王杯・G1(11月16日、京都競馬場・芝2200メートル)
エリザベス女王杯に、秋華賞2着の
エリカエクスプレスが参戦。今年50勝でリーディングトップの杉山晴紀調教師=栗東=は、前走で初タッグだった武豊騎手=栗東=の進言があったと明かし、2連勝中の
オーロラエックスとの2頭出しに意気込む。
冷静な分析力がぶれることは一切ない。秋華賞2着の
エリカエクスプレス(牝3歳、栗東・杉山晴紀厩舎、父
エピファネイア)にとって、今回が初の古馬G1。現在、23年に続く2度目の全国リーディングへ首位を突き進む杉山晴調教師は「結構な壁はあります。そんな簡単にはいかないのかなと思っています」と表情を引き締めた。20年には
ジャパンCとはいえ、無敗の3冠牝馬
デアリングタクトが古馬初対戦で無傷の連勝が止まった苦い記憶もある。
それでも、挑戦を選んだ。「やはり、京都ということが大きいです」と今まで《1》〈2〉着と連対率10割のコース相性が大前提。そして、言葉を続けた。「秋華賞の後、豊さんから『エリザベスを使わないの』というような言葉が出てきたんです。あれだけのジョッキーが言ってくるということは、乗った感触でいけるんじゃないかと思ったからこそじゃないかな、と」。02年
ファインモーション、03年
アドマイヤグルーヴと3歳馬で2度の古馬超えを成し遂げている武豊の言葉が背中を押した。
秋の始動戦だった京成杯AHで11着と大敗。杉山晴師は進むべき道を悩んでいた。「マイルか、さらに詰めるか」「短距離血統じゃないけどな」。さまざまな思いが巡るなか、最終的には3歳牝馬同士という面に重きを置いて決断。「正直、絶対秋華賞という感じで使ったわけではありません。そこを豊さんがうまくリードしてくれました」とたたえる。初コンビでも序盤からスムーズに折り合い、絶妙な逃げで引き出された中距離適性。巧みな技術で可能性は広がった。
かなえたい思いがある。16年10月の開業から、この秋で10年目。まだ、武豊と勝利の瞬間を味わったことがない。「僕らの世代にとっては、雲の上の存在ですからね。ただ、うちの厩舎で勝っていないので…。それがG1だったらいいですね」。若きトップトレーナーの頭脳とレジェンドの技術が融合すれば、壁は決して高くない。(山本 武志)