00年のマイルCSはアグネスデジタルが制した(00年11月撮影、ユーザー提供:aunogakuwariさん)
巷で二刀流といえば大谷翔平だが、近代競馬の初代二刀流はアグネスデジタルだろう。芝ダートはもちろん、中央・地方・海外の枠を超えて活躍したレジェンド。そんな彼がGI初制覇を果たした00年のマイルCSを振り返る。
アグネスデジタルは父Crafty Prospector、母Chancey Squaw、母の父Chief's Crownの血統。米国生まれの外国産馬だった。栗東・白井寿昭厩舎からデビュー。2歳(旧3歳)時に全日本3歳優駿で重賞初制覇。3歳を迎え、芝の重賞では勝ち切れなかったものの、ダートで名古屋優駿、ユニコーンSと2つのタイトルを加える。そして古馬初挑戦の武蔵野Sを2着にまとめると、陣営は5戦ぶりの芝となるマイルCSへの参戦を決めたのだ。
それ以前は芝で4戦して未勝利。それだけに単勝55.7倍の13番人気に過ぎなかったが、アグネスデジタルは覚醒したような走りを見せた。前半1000mが56秒9のハイペースを後方追走。直線に向いて馬群を捌きながら大外に進路を取ると、残り200mからの末脚が強烈だった。的場均騎手の叱咤に応えて、まさに鋭伸。1頭、また1頭と交わすと、早め先頭の1番人気ダイタクリーヴァをゴール前で捕らえてフィニッシュ。芝初勝利がGIという離れ業でマイル界の頂点に立ってみせた。
勝ち時計の1分32秒6は従来の記録を0秒1更新するコースレコード。翌02年に引退を迎える的場均騎手にとっては、結果的にこれが最後のGI制覇となった。また、単勝の5570円は今も残るレース史上最高配当。記憶にも記録にも残るレースとなったのだった。