2002年11月17日京都競馬場で行われたマイルチャンピオンシップを優勝したトウカイポイント(中央、鞍上は蛯名騎手)
今年のマイルCS・G1(11月23日、京都競馬場・芝1600メートル)は、どんなドラマが生まれるのか。過去の名勝負・02年勝ち馬の
トウカイポイント(蛯名騎乗)を振り返る。
11番人気の
トウカイポイント(蛯名)が直線で力強く伸び、父子3代のG1制覇を果たした。大歓声が待ち受ける直線で、11番人気の伏兵が躍動した。5、6頭が横一線に並んだ激戦の中を、
トウカイポイントが蛯名の手綱に応えて抜け出した。あとゴールまで100メートル。内から
リキアイタイカン、外からエイシンプレストンが強襲してきたが振り切って、スターホースの仲間入りを果たした。
祖父シンボリルドルフ―父トウカイテイオーに続いて、父子3代G1制覇の快挙だ。ゴールに飛び込むとすぐ、蛯名は左手で力強く
ガッツポーズ。「流れに乗れたし、いい伸びを見せてくれた。最後も何とか我慢してくれました」会心の笑みを浮かべた。
前走の悔しさを晴らすことしか考えていなかった。中団をじっくりと進み、4コーナーでも抜群の手応えだった。「しっかり追えるように広いところはないか」―蛯名の脳裏には、馬群にもまれっぱなしで追うことすら出来ずに5着と敗れた富士Sがあった。同じ過ちは繰り返さなかった。前にブレイクタイム、左にアドマイヤコジーン。その間をきれいにさばいて、地方出身の6歳馬を勝利に導いた。「前走でミスしたのに、乗せてもらえた。オーナー、調教師に感謝の気持ちです」晴れ晴れとした表情が秋の夕日に輝いた。
開業7年目の後藤調教師(当時)は、我慢の末につかんだG1初制覇といってもいいだろう。「体が弱いのに一生懸命に走りすぎてしまう。気持ちと体の
バランスを整えるのが難しい」そのため長めの距離を中心に使った。さらに、01年4月の準オープン特別(11着)のあとに去勢もした。「余分な脂肪が落ちたし、無駄なことをしなくなった」地道な努力が実を結んだのだ。