10年マイルCS。伏兵エーシンフォワードがインから鋭く抜け出し、1分31秒8のコースレコードでG1初制覇
今年のマイルCS・G1(11月23日、京都競馬場・芝1600メートル)は、どんなドラマが生まれるのか。過去の名勝負・10年勝ち馬の
エーシンフォワード(岩田康騎乗)を振り返る。
好位から抜け出した13番人気の
エーシンフォワードが、
ダノンヨーヨー、
ゴールスキーの猛追をかわし、秋のマイル王に輝いた。岩田康誠騎手は落馬負傷から復帰後2週目にしてG1制覇を成し遂げた。持ち味が凝縮された金星だった。直線ラスト1ハロン手前。道中は内ラチ沿いで息を潜めていた岩田と
エーシンフォワードが、一気に抜け出した。左ステッキと激しく動く手綱に反応するようにグンと加速。外から大歓声とともに襲いかかる有力馬たちの追い上げを封じ込んだ。人馬一体となり、自在性を体現した無駄のないレース運び。13番人気の伏兵がレコードVの大仕事をやってのけた。
前半3ハロンが33秒7。過去10年(当時)に存在しない33秒台のハイペースとなった。おのずと最後は差し比べとなったが、ひと足早くインから抜け出した
エーシンフォワードが、外からの追い込み勢を辛抱して首差のV。急仕上げの前走を叩いてプラス10キロ。本来の状態を取り戻しており、
ハイラップの時計勝負も、もともと強いタイプ。ペース、馬場が大駆けへの期待を高めていたが、やはり明暗の“明”は道中の思い切りよい大胆な攻めだろう。前半1ハロン手前で隊列が途切れ、最内へ難なくリードできた。芝はCコース開催2日目。ロスなく運べ、コンディションのいい内ラチ沿いへと導いたここが、
ビッグプレーだった。
復帰後2週目。鮮やかにG1勝利を決めた岩田康が笑顔で振り返る。「ペースも展開も全部ハマりましたね。ホント、うまくレースができました」。検量室前では興奮で目を充血させた西園調教師が、次から次へと駆け寄る人と握手、そして抱き合う姿があった。01年の阪神JF以来、約9年ぶりのG1タイトルのカギは“戻す”ことだった。
前走のスワンSは久々の実戦に備え、レース当週に50秒9を出したため、馬体重が8キロ減。今回は1週前追い切りも馬なり、当週もラスト重点に52秒1と“控えめ”。攻めの調教で仕上げる厩舎にしては珍しいパターンだったが、これが奏功した。この日は10キロ増。「人気はありませんけど、馬が前回と全然違う。期待していてください」。パドックで関係者につぶやいた言葉は現実となった。