細かい雨が降り続き、重馬場まで悪化した美浦坂路。大きく先行する
サトノロマネ(5歳500万下)を追いかける形で
アパパネがスタートを切った。12.5秒-11.7秒-12.0秒の
ハイラップを刻み、ラスト1F標識で馬体を並べると強めに追われて12.9秒。ゴール地点では僚馬との差を1馬身に広げていた。
「しまいは思ったよりも一杯になったかなという感じ。まあ、テンから結構なペースで行ったからな」と国枝師は話したが、全体時計の4F49秒1はこの日の断トツとなる一番時計。しかも、またがった蛯名が「前に馬がいて邪魔になりそうだったし、時計が速いと思ったから残りの20mは流したんだ」と証言したのだから、馬場状態を考えても優秀な時計だ。
それでも蛯名の
ジャッジは厳しい。「何ていうのかな。もう少し伝わってくるものがほしかったというのが本音かな」。これも立ち向かう相手が強大であるからこその高い要求なのだろう。「単なる牝馬が相手じゃない。100の状態でぶつかってみてどうかという、そのぐらいすごい壁に挑戦するんだから」と気を引き締める。
確かに年度代表馬の
ブエナビスタは強い。だが、
アパパネだってブエナもなし得なかった3冠牝馬の偉業を達成している。「全力を出し切ってワクワクするような競馬ができればと思っている」と国枝師が言えば、「オレの馬だってすごいことをやってきた強い馬。胸を借りてみてどれだけやれるのか」と、対戦を心待ちにする。
当事者も胸躍らせる、牝馬の頂上決戦。現役最強牝馬を決める一戦で女同士の意地がぶつかり合う。
提供:デイリースポーツ