ヒガシウィルウィンが10年マグニフィカ以来の地方馬JDD制覇(撮影:高橋 正和)
エピカリスが不在となって、予想で「大混戦」と書いたジャパンダートダービーは、やはり地方馬にも付け入るスキがあった。東京ダービーを2分6秒9で勝ったヒガシウィルウィンは、「近年のジャパンダートダービーの勝ちタイムがおおむね2分5秒前後であることを考えると、東京ダービーよりもう少し厳しいペースになっても走りきれるだけの力があれば、勝ち負けの可能性はおおいにありそう」と書いたのもそのとおりの結果となった。
東京ダービー(上)とジャパンダートダービー(下)の前・後半のタイムと勝ちタイムを並べてみると……
63.4 + 63.5 = 2.06.9(重)
62.0 + 63.8 = 2.05.8(良)
ヒガシウィルウィンは、両レースともペースをつくった逃げ馬から3、4馬身ほどのところを追走。中間1000m通過が東京ダービーより1秒4速く、これが乾いた馬場だったことを考えると、かなり厳しいペースだったように思われる。それでもレースの上がりでコンマ5秒遅くなっただけ。ヒガシウィルウィン自身の上がりも、東京ダービーが38秒0で、今回が38秒2。東京ダービーは後続を6馬身ちぎってゴール前は余裕があったにしても、今回の前半のペースを考えると東京ダービーよりもかなりパワーアップしていたと考えられる。
ヒガシウィルウィンは、羽田盃で2着に負けていただけに、東京ダービーが7分、8分程度の仕上げだったということは考えられず、おそらく目一杯の仕上げだったのだろう。そこからここに向けてさらに強い調教を課して、「状態はよくなっていた」(佐藤賢二調教師)とのこと。
南関東移籍初戦だった浦和・ニューイヤーCは、今回7着だったブラウンレガートをぎりぎりアタマ差とらえたという接戦で、そこからの一戦一戦を振り返ると、3歳になってのこの半年で相当に力をつけた。
今や地方のダートでは安定したリーディング種牡馬のサウスヴィグラスだが、ラブミーチャンのように息長く活躍した馬もいるにはいたが、2歳から3歳春くらいまでに一線級で活躍してもその後はイマイチという馬も少なくなかった。それがここに来ての成長ということには驚かされる。ぼくは血統には詳しくないので、3代、4代、5代のクロスがどうとかは語れないが、おそらく母の父ブライアンズタイムがその成長力と2000mの距離でもというスタミナを支えているのだろう。
そして今回、主戦の森泰斗騎手は踵の骨折で療養中。JpnIのジャパンダートダービーで東京ダービー馬への初騎乗となった本田正重騎手は相当なプレッシャーだったろうが、見事な騎乗だった。道中は馬群の中でじっと我慢し、4コーナーで馬群を縫うように一気に外に持ち出しての差し切り。陣営がレース前に思い描いていたとおりのレース運びだったようだ。
ヒガシウィルウィンの直前、4、5番手を追走していたサンライズソアが残り200mあたりでラチ沿いから一旦は完全に抜け出し、ほとんど勝ちに等しいレース内容。
ユニコーンSを勝って1番人気となったサンライズノヴァは中団を追走して見せ場なく6着。対してユニコーンS3着だったサンライズソアが2着と逆転。ユニコーンSはハイペースの先行勢総崩れで、中団より後ろで脚を溜めたサンライズノヴァが存分に末脚を生かせる展開になった。一方のサンライズソアは5、6番手を追走して先行勢では唯一粘って3着ということでは、その地力こそを評価すべきだった。
タガノディグオは4コーナー8番手あたりの一線からメンバー中最速の38秒1で上がって3着と、あらためて能力の高さを示した。エピカリスがいればどうだったかは別として、差のない4着のリゾネーターあたりまで能力差はなく、ジャパンダートダービーの過去の勝ち馬との比較でも平均的なレベルにあるといえそうだ。