見事な連携で兵庫の“エイシン”が今年グレード2勝目/サマーチャンピオン回顧(斎藤修)

2018年08月15日 18:00

長くしぶとく脚を使ったエイシンバランサーが重賞初制覇(撮影:稲葉訓也)

 この時期は中央の一線級の馬たちのほとんどが休養に入っていて、さらにダート短距離路線は盛岡・クラスターCとメンバーが分散することになる。それゆえ中央勢は軽いメンバーになることもめずらしくないが、今回はいずれも重賞未勝利。むしろそのような馬がここで賞金を稼いで飛躍を目指す舞台ともいえる。ダートグレード勝ち馬は、単勝234倍という大穴で黒船賞を勝った兵庫のエイシンヴァラーだけというメンバーとなった。

 そして勝ったのは、兵庫から出走した“エイシン”のもう1頭、エイシンバランサーだった。それにしても同じ新子雅司厩舎から出走したエイシンの2頭は、当初からそれを狙っていたのかどうか、まったく見事な連携だった。

 スタートからエイシンヴァラーが行く気を見せたが、さすがに11頭立ての大外枠もあり、3番枠から好ダッシュを見せたブルミラコロの2番手に控えることになった。ルグランフリソンが3番手で、1番人気のヨシオが続き、エイシンバランサーはそのうしろから。

 コーナーを4つ回る地方の1400m戦は、コーナー2つの中央の1400m戦と違い、向正面で流れが落ち着き息が入ることもめずらしくない。しかし今回は、逃げたブルミラコロを、ぴたりと直後でエイシンヴァラーが突いて息が入るところがなかった。

 向正面中間、エイシンヴァラーの吉村智洋騎手が追い出してブルミラコロにさらにプレッシャーをかけると、それを見計らっていたかのように、5番手にいたエイシンバランサーの下原理騎手も進出を開始。ともすればタイミング的には早仕掛けだったかもしれない。

 そして3コーナー手前、エイシンヴァラーが一杯になって下がり始めたところで、今度はエイシンバランサーがブルミラコロの直後にぴたりとつけた。チーム・エイシンの見事なタイミングでのバトンタッチといえよう。前・後半で異なる馬に直後で突かれ通しとなったブルミラコロはたまらない。直線でも粘ってはいたが、長くしぶとく脚を使ったエイシンバランサーに最後は屈することとなった。

 差のない3番手を追走していたルグランフリソンも直線では一杯になって4着。ヨシオは、エイシンバランサーがペースアップした向正面で一緒に上がっていこうとしたものの反応はイマイチ。ゴール前でようやく3着に盛り返したのは、2000mのマーキュリーCで逃げて2着に粘った底力だろう。

 新子雅司調教師と下原理騎手のコンビは、エイシンヴァラーによる黒船賞に続いて、今年ダートグレード2勝目。新子調教師は、ほかにタガノジンガロによるかきつばた記念(2014年)制覇があり、下原騎手には同じく佐賀でチャンストウライによる佐賀記念(2008年)制覇がある。ともにダートグレード3勝目となった。

 それにしても新子厩舎の主戦(所属ではないが)の下原騎手は、エイシンヴァラーで黒船賞を制していながら、今回エイシンバランサーのほうに騎乗したというのは、勝機ありと見てのことだったのだろうか。昨年は新子&下原のコンビが兵庫の調教師・騎手リーディングとなり、下原騎手は昨年初めて全国リーディングも獲得。そしてエイシンヴァラーの吉村騎手は、目下のところ全国リーディングのトップ。勢いのあるチームによる、まさにあっぱれなダートグレード制覇だった。

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