【菊花賞 勝負の分かれ目】ルメール騎手の「ちょっとガマン」と、陣営の粘り強い仕上げに拍手

2018年10月21日 19:10

菊花賞で最後の一冠を手にしたフィエールマン

 今年の菊花賞は、逃げ、先行で良績のある馬が複数いて、それらが真ん中より内の枠に集まった。

 ゲートが開くと、田辺裕信のジェネラーレウーノがアイトーンとの先手争いを制する形でハナに立った。カフジバンガード、エポカドーロのほか、外からコズミックフォースも先団にとりついた。

 クリストフ・ルメールのフィエールマンは中団。その内に武豊のユーキャンスマイルがつけ、直後で池添謙一が乗る1番人気のブラストワンピースがガチッと手綱を押さえている。それらを見ながら後方の外目を進んでいたミルコ・デムーロのエタリオウが、1周目スタンド前でスルスルとポジションを上げ、中団へ。

 最初の1000mは1分2秒7という、ゆったりした流れになった。

 1、2コーナーを回り、向正面に入った。

 ジェネラーレウーノが引っ張る先行集団はほぼそのまま。中団馬群にフィエールマン、少し後ろの外にエタリオウ、その内にユーキャンスマイル、さらにその後ろにブラストワンピースがつけている。

 2000m通過は2分6秒9。ということは、この1000mは1分4秒2という、最初の1000m以上に遅い流れになったわけだ。

 ラスト800m。3コーナーの坂を下りながら馬群が密度を高めていく。しかし、手が激しく動いている騎手はいない。どの馬も余力を残している。

 内埒沿いを行くジェネラーレウーノが先頭をキープしたまま直線へ。

 スローに落として流れ込みをはかるこの馬をはじめとする先行馬に有利かと思われたが、ここからヨーイドンの瞬発力勝負になってしまった。

 エタリオウが外から一気に進出し、内の馬たちに並びかけた。その後ろからブラストワンピースも脚を伸ばす。

 フィエールマンも手応えはいいが、前を塞がれている。「直線に向いて、ちょっとガマンした」とルメール。

 そのままエタリオウが突き抜けるかに見えたが、内のアフリカンゴールドとの間にできたスペースから、フィエールマンが凄まじい勢いで伸びてきた。同じところからユーキャンスマイルも差を詰めてくる。

 早めに先頭に立ったエタリオウをめぐる、激しい攻防が始まった。

 フィエールマンが並びかけると、外からエタリオウが差し返す。

 2頭並んでフィニッシュしたが、ルメールのフィエールマンが、わずかにハナ差だけ前に出ていた。

「ミルコの馬は外からスムーズだった。ぼくの馬は切れ味があり、すごい瞬発力。負けたと思ってミルコに『おめでとう』と言ってしまいました」

 そう話したルメールは、先週の府中牝馬Sのディアドラ、秋華賞のアーモンドアイ、富士Sのロジクライにつづく重賞騎乗機会4連勝をやってのけた。さり気なく口にした「ちょっとガマン」で前があくのを待った判断も素晴らしかったが、3カ月半ぶりの実戦で、これだけの瞬発力を発揮できる状態に仕上げた陣営の努力に拍手を贈りたい。

 なお、ルメールの重賞騎乗機会4連勝の相棒も、この菊花賞の1〜4着馬も、すべてノーザンファームの生産馬だった。勝負の分かれ目はそこだと言ってしまうと元も子もないが、その強い馬づくりには敬意を表さなければならないだろう。

 ブラストワンピースは4着。瞬発力勝負になると、分が悪かった。

 8着のエポカドーロ、9着のジェネラーレウーノは、おあつらえ向きの流れながら伸びなかったということは、距離が長かったか。

(文:島田明宏)

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