日本の牝馬として初めてジャパンCを制したウオッカ(右、撮影:下野雄規)
今年のジャパンカップで、史上5頭目の牝馬優勝を狙うのはアーモンドアイ。日本の牝馬が初めてジャパンカップを制したのは、レースが創設されて29年目のことだった。今回の『ジャパンカップ名牝列伝』は、2009年のウオッカをお送りする。
■3年連続出走で悲願達成
ウオッカは3年目の挑戦で、ジャパンカップのタイトルを手にした。
最初の挑戦は2007年。牝馬として64年ぶりのダービー制覇後、宝塚記念にも出走。夏には蹄球炎でフランス遠征を断念した。秋緒戦の秋華賞は3着に敗れ、次走のエリザベス女王杯は右寛跛行でレース当日朝に取消、そこから中1週での出走だった。
レースは最後方待機から、4コーナーで進出開始。直線はメンバー最速の上がりで鋭く追い込んでくるも、スローペースでもあり届かず。勝ったアドマイヤムーンに0.2秒差の4着となった。
翌2008年は、ダイワスカーレットにわずか2センチ差で勝利した、あの天皇賞・秋から中3週。日本馬は3世代のダービー馬がそろって参戦した。
この年は好位につけたが、終始行きたがりなだめられながらの追走。直線を向くと手ごたえはいまひとつで、スクリーンヒーローとディープスカイに交わされる。しかし、マツリダゴッホとの接戦は制して、勝ったスクリーンヒーローに0.2秒差の3着に踏ん張った。
そして3年連続の出走となった2009年、この年も天皇賞・秋からの参戦だった。その天皇賞・秋は、好スタートから後方の内を追走し、メンバー最速の上がりで馬群の内を割ってきたが3着まで、連覇はならなかった。
天皇賞・秋のあともしっかり乗り込まれ、秋3戦では一番良い状態でジャパンカップを迎える。日本馬はウオッカのほか、連覇を目指すスクリーンヒーローや、この年の秋華賞馬レッドディザイアなどが、外国馬はブリーダーズカップターフを連覇したコンデュイットらが参戦。ウオッカは単勝オッズ3.6倍、3度目の挑戦で初めて1番人気に支持された。2番人気は前年の菊花賞馬オウケンブルースリ、3番人気にコンデュイットが続いた。
レースは最内枠からアサクサキングスが押して前へ出るが、2コーナーでリーチザクラウンが先頭を奪う。ウオッカは4番手、オウケンブルースリは後方を追走した。1000m通過は59.0秒、その後も淀みのないペースでレースが進み、3コーナー手前から後方勢が前に接近して固まった状態で直線を向く。
抜群の手ごたえで、馬場の中ほどを加速したウオッカは、残り200m手前でリーチザクラウンとエイシンデピュティを交わして先頭に立つ。そのまま抜け出したところを、外からレッドディザイアが、そしてオウケンブルースリが大外からウオッカに鋭く迫った。ウオッカとオウケンブルースリはほぼ並んでゴールし、写真判定の結果、ウオッカがハナ差で勝利した。
こうして、ジャパンカップがはじまって29年目に、日本の牝馬が頂点に立ったのである。
ウオッカは、6歳春まで現役を続けGIを7勝したが、そのうち牝馬限定戦は阪神JFとヴィクトリアマイルの2レースのみ。男馬と互角にわたりあったその戦いは、女傑の1頭とされるにふさわしいものだった。