小牧太騎手とのコンビで制したローズキングダム(撮影:下野雄規)
キャリアの浅い2歳戦は好きな血統の馬券を買って楽しむ、というファンもいるだろう。今週の「朝日杯FS列伝」は無敗がテーマだが、今回と次回は血統にもスポットをあててみたい。今回は2009年のローズキングダムを振り返る。
■無傷の3連勝で一族の夢を叶える
「バラ一族」と呼ばれる名血に悲願のGI勝利をもたらしたのが、第61回朝日杯フューチュリティステークスのローズキングダムだった。
デビュー戦は、10月の京都芝1800m。皐月賞馬でのちに有馬記念やドバイワールドCを制したヴィクトワールピサに次ぐ2番人気で出走し、最内枠から好位抜け出しで勝利。続く東京スポーツ杯2歳S(東京芝1800m)は1番人気で出走し、直線でトーセンファントムとの激しい競り合いをアタマ差で制した。この重賞初制覇は、バラ一族にとって2年半ぶりの重賞勝利でもあった。
そして迎えた朝日杯FS。無敗で挑んだローズキングダムは、初のマイル戦ながら1番人気(単勝オッズ2.3倍)に支持される。2番人気は京王杯2歳Sの覇者エイシンアポロン(同5.3倍)、3番人気は東京スポーツ杯2歳S2着のトーセンファントム(同6.1倍)、以下キングレオポルド(同7.2倍)、ダイワバーバリアン(同13.5倍)が続いた。
レースは最内スタートのバトルシュリイマンが先手を取り、ローズキングダムは先行勢を見ながら中団を進む。後方で2頭が置かれて縦長となった隊列のなか、前半800mは46.1秒とやや速いペースだったが、そこから緩んだことで先行馬群は一団となっていく。直線に入り、4コーナーから位置を上げたキングレオポルドとエイシンアポロンが先頭に立つ。そしてエイシンアポロンが抜け出しを図ろうとしたところ、ローズキングダムが外から伸びてきた。坂を上がるとローズキングダムはエイシンアポロンを一気に交わして1馬身1/4差でゴール板を駆け抜けた。直後に小牧太騎手は、ローズキングダムの首をポンポンと叩き労ってから、力のこもったガッツポーズを見せた。そして、ウイニングランの間も相棒の首を何度もなでた。
レース後、小牧騎手は「僕の馬が一番強いんだと自信を持って乗りました。馬場入りからすごく落ち着いていたし、手ごたえも抜群で直線ではいつでも交わせるくらいでした。馬をほめてほしいし、これだけの馬に乗せてもらえて幸せ」、そして「母の仔でGIを勝てて本当に嬉しいです」と語った。小牧騎手にとってもバラ一族は特別な存在だった。彼が園田に所属していた2001年、JRAで初重賞(フィリーズレビュー)を飾ったとき騎乗していたのが母のローズバドなのである。
「バラ一族」は曾祖母ローザネイから始まり、“バラ”の名がついた多くの活躍馬がいる。ただ、一族はこの朝日杯FSまで重賞を15勝しながらGIは未勝利。ローズキングダムの母ローズバドも3回挑んですべて2着だったように、あと一歩でGIタイトルを獲れずにいた。そんな「バラ一族」の34回目の挑戦で、悲願を叶えたのがローズキングダムだったのである。