2019年7月30日、史上2頭目の無敗の三冠馬・ディープインパクトが17歳でこの世を去った。現役時代はすべての国内レースで上がり最速をマークする圧倒的な末脚を武器に通算14戦12勝という成績を残し、GI勝利は「7」を数えた。また、種牡馬としてもその強さを産駒に伝え、5頭のダービー馬をはじめ多くのGIホースの父となり、既に産駒のJRA・GI勝利数は「51」。現役時代と同様に、日本競馬界を牽引してきた。
今回はこの稀代の名馬への追悼企画として、新馬戦からラストランとなった有馬記念まで、ディープインパクトの現役時代全14戦を改めて振り返る。
■出遅れも問題なし、ラスト600mで既に先頭へ
前哨戦の阪神大賞典を楽勝したディープインパクトは、本番の天皇賞・春に駒を進めた。自身のほかにGI馬は既に2戦連続で先着しているデルタブルースのみという相手関係もあり、ここでも単勝オッズは1.1倍の一本被り、単勝支持率は75.3%とこのレース史上最高の数字となった。そしてこの舞台でディープインパクトは、伝説の若駒Sなどと並び、今でも語り継がれる驚異のパフォーマンスを見せる。
スタートで立ち遅れ、いつにも増してゆったりとした序盤となったディープインパクトは17頭中の16番目と最後方。最初のホームストレッチを過ぎ、コーナーを回り、向正面ではややポジションを上げているが、それでも14番手といったところ。
ここからが圧巻だった。競馬場こそ今回と違えど、かなり早めに動き出した阪神大賞典と比較してもさらに早く、ラスト1000mを切ったあたりで一気に進出。あっという間に先頭に立ってしまう。この時点でまだゴールまでは600m以上あった。
直線に入った段階で後続に1〜2馬身ほどの差をつけて先頭に立っていたディープインパクトを、ここから差せる馬などいなかった。あとはいつも通り差を広げていくだけ。2番人気の2着リンカーンだけがわずかに追いすがったが、それでも最終的に着差は3馬身半。リンカーンから3着ストラタジェムまでは5馬身。再び圧勝で菊花賞以来のGI・4勝目となった。
ゴール後に電光掲示板に記された勝ちタイム「3:13.4」と「レコード」の文字に誰もが目を疑った。1997年の同レースでマヤノトップガンがマークしたレコードタイム「3:14.4」は当時でさえ驚きをもって受け止められたが、それをさらに1秒短縮する凄まじい時計だった。
翌5月、陣営から次走は国内で宝塚記念に出走し、その後渡仏し10月の凱旋門賞へ挑戦するというプランが発表された。
<レース映像>
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