先行策から抜け出して重賞初制覇、樫への切符を勝ち取ったクールキャット(撮影:下野雄規)
16番のアンフィニドールが積極的に前に行き、ハナを取り切ってから、2コーナーへと入って行く。
すぐ内の15番枠から出たクリストフ・ルメールのクールキャットもいいスタートを切った。
「今回は前のほうにつけたかったので、スタートでちょっと出して行きました。すぐいいポジションを取って、別の馬の後ろにつけたら、冷静に走ってくれました」
そうルメールが振り返ったように、クールキャットは2コーナーで12番スライリーの後ろにつけ、外目の4番手で向正面へと入って行く。
アンフィニドールが飛ばし、2番手を5馬身以上離して、単騎逃げの形に持ち込んだ。
クールキャットは2番手のララサンスフルから2馬身ほど後ろ。ひとり旅をつづけるアンフィニドールとの差は8馬身ほどか。
3コーナー手前でアンフィニドールがペースを落とし、少しずつ馬群が詰まってきた。
1000m通過は1分0秒2。
3、4コーナー中間で、ルメールはクールキャットをスライリーの真後ろから、少し外に持ち出した。
先頭のアンフィニドールとの差は3馬身ほどに縮まっている。
直線に向いた。
馬場の真ん中に出たクールキャットの前方は完全にクリアになっている。
ラスト400mあたりからルメールの手の動きが大きくなった。半馬身ほど前に出ている内の馬たちをいつでもかわせそうな手応えだ。
ラスト200m地点でルメールが右ステッキを入れた。それに応えてクールキャットが末脚を伸ばし、内のスライリーより僅かに前に出る。
「トビが大きい馬ですから、直線ではあまり切れないけど、長くいい脚で伸びてくれます。外に出したら、だんだん加速しました」とルメール。
クールキャットはそのままじわじわと差をひろげ、2着のスライリーに1馬身差をつけ、見事、重賞初制覇を果たした。
3代母メジロツシマの甥にメジロマックイーンなどがいる「メジロ血統」の牝系で、父がスクリーンヒーロー。1400mの新馬戦のあとはマイルを2回使い、前走は1800m、そして今回と、距離を延ばしながら、よさを引き出してきた。ルメールの好騎乗のみならず、陣営の戦略で手にした重賞タイトルであった。
(文:島田明宏)