過去には“1番人気が勝てない重賞”と言われていた七夕賞。1979年ファーストアモン(当時のレース名は東北記念)から2004年メジロマントルまで、1番人気が26連敗していたのも有名な話。それ以降はポツリポツリと勝ててはいるのですが、それでも1番人気には厳しい重賞のひとつだと考えられます。
レースの質としては、瞬発力よりも末脚を持続させる勝負。一瞬の脚でシュッと抜けてくる馬ではなく、一定のペースでスピードを持続できる馬。しかも後方からザックリと差してくるタイプよりも、ある程度自分から動けるほうがベターです。もちろん、ハンデ戦であることも重要なポイントです。
それではクレッシェンドラヴから。前年の七夕賞勝ち馬であり、2年前にも同レースを2着。それらに加えて福島芝2000mのコースでは福島記念勝ちとオープン特別2着で4戦4連対の重賞2勝。このコースへの適性という意味では、文句の付けようがない存在です。しかし前年の七夕賞勝ちのあとは4戦して勝ち星なし。ジャパンカップや有馬記念、大阪杯とGIで強い相手との対戦が続いたことは確かですが、それを考慮しても負け過ぎか。7歳という年齢、ピークを過ぎた印象も否定はできません。
ヴァンケドミンゴは、前年の七夕賞3着馬にして(同コース重賞の)福島記念2着馬。それらに加えて福島競馬場は6戦[4-1-1-0]という、こちらも現役屈指の福島巧者です。ただ、こちらもクレッシェンドラヴと同様に近走内容が今ひとつ。こちらは衰えを考えなければならない年齢ではありませんが、それでも福島以外でそれなりの走りは見せていた馬であるだけに、負け過ぎの感は否めません。
昨年、ジャパンカップへの出走が話題になったトーラスジェミニですが、今まで3度◎を打って、函館記念で5人気4着、ディセンバーSで4人気1着、東風Sで4人気1着。適性面も含めた狙いどころは心得ているつもりです。この馬もラップ傾向的には絶対的な小回り巧者。それだけに前走の“安田記念5着”は不得手なはずの東京コース、得意な形に持ち込んでのものでもないだけに、大きな価値があると思われます。
クラージュゲリエは、2歳時から高く評価しながらも、なかなか◎を打つ機会がなかった馬ですが、今回は京都2歳S以来約3年ぶりに◎を打てるレースかもしれません。福島コースは初経験になりますが、2歳時から瞬発力よりも末脚の持続力で勝負してきた馬。蟻洞(ぎどう)を患って以降の走りは押し並べて2歳時に劣るものですが、それでもオープン特別2着でGII・日経新春杯3着、ローカルのGIIIならと思わせるところはあります。でも実は、これこそダートを走らせてみたい1頭でもあります。
今回、もっとも評価に迷う馬がワーケアですね。好走時の成績から瞬発力に特化した馬だと思っていたのですが、ダービー以降の負け方を見るに、そうではない可能性も浮上。馬のタイプ、末脚の質を見極める上で、今回の七夕賞出走は非常に有意義なものだと思います。ただ、馬券的には今回見極めて次走から狙うのでは遅く、狙うなら今回レース前にシッカリと仮説を立てて判断したいところです。
ツーエムアロンソは今年1月に14番人気で◎を打ち、単勝114.8倍で的中させた馬ですが、オープン入りしてからは4レース連続で無印。しかし今回は福島コースの芝2000mということで、ふたたび狙える可能性が出てきました。スタミナ豊富な持続力のある末脚で、3勝クラスの勝ち方も悪くはないレベル。穴馬推奨と言うなら、ハンデ53kgのこの馬を推すことになります。
(文/岡村信将)