アイビスSDを制した3歳牝馬オールアットワンス(撮影:下野雄規)
レコードの更新も期待された良馬場のコンディションのもと、第21回アイビスサマーダッシュのゲートが開いた。
横並びのスタートから、12番ライオンボス、11番ロードエースらが先手を取り、外埒のほうへと近づいて行く。その一方で、最内1番枠から出た菅原明良のバカラクイーンだけは内埒沿いへと進路を取った。外埒近くに集まったほかの15頭と内外大きく離れているが、ライオンボスやロードエースとそう差のない位置を取り、快調に飛ばす。
テン乗りの石川裕紀人が騎乗する1番人気のオールアットワンスは、ライオンボスとロードエースより1馬身半ほど後ろの3、4番手につけた。
「スピードがあることは競馬を見てわかっていました。外枠を引いたので、深く考えず、スピードを信じて乗るだけでした」と石川。
ラスト400m手前で、オールアットワンスは楽な手応えのまま、外を行くライオンボスとロードエースに並びかけた。大きく離れた内には、相変わらずほぼ横並びでバカラクイーンがいる。
ラスト200m付近で、外の集団からオールアットワンスとライオンボスが抜け出した。オールアットワンスが半馬身かクビほどの差で先頭だ。
石川の右鞭を受けた51kgのオールアットワンスが、57kgのライオンボスを引き離しにかかる。オールアットワンスは最後まで伸び切り、2着のライオンボスに3/4馬身差をつけ、先頭でゴールを駆け抜けた。3着は、内埒沿いを1頭で走っていたバカラクイーン。
勝ちタイムは、レコードよりコンマ5秒遅い54秒2。11秒7-10秒2-10秒5-10秒7-11秒1というラップが示すように、序盤から中盤にかけて、千直にありがちな激流にならなかったゆえか。
「斤量が味方してくれた部分はあったと思いますが、強い男馬がいるなか、この内容でよく勝ち切ってくれました。これからどんどん成長してくれる馬だと思います」
石川はそう言って、千直初参戦で重賞初制覇を果たしたオールアットワンスを讃えた。斤量差を生かしつつ、騎乗馬のスピードと切れを信じ、その武器をフルに生かした石川の好騎乗が光った。
(文:島田明宏)