着差以上に強い勝ち方をしたマルシュロレーヌ(撮影:田中哲実)
ゆったり流れて中央4頭はほぼ一団。レース中盤からは後続の地元北海道勢とは差が開き、実績・人気どおり中央4頭の争いとなった。逃げたリネンファッションに競りかけていく馬はおらず、武豊騎手はそのまま逃げ切れるような展開に持ち込んだ。しかしマルシュロレーヌの川田将雅騎手は、馬に合図を出して軽く気合をつけただけ。ゆったり流れて直線ヨーイドンの瞬発力勝負は、レースの上がり3Fが36秒8のところ、マルシュロレーヌが36秒5で難なく差し切った。
57kgのレーヌブランシュが除外となり、他馬より2kg重い57kgはマルシュロレーヌだけ。その斤量差に加え、ゴール前でリネンファッションを交わすときのマルシュロレーヌの手応えを見ても、1/2馬身差という着差以上に強い勝ち方だった。
そもそもマルシュロレーヌは勝つときも必要以上に着差をつけない。ダートグレード初挑戦だったレディスプレリュードこそ3馬身差は圧巻だったが、TCK女王盃が1/2馬身差、エンプレス杯が3/4馬身差、そして今回も1/2馬身差。ゴールのときに少しでも前に出ていればいいという勝ち方。しかもどんな展開にも対応でき、ペースや展開に恵まれてということがない。
TCK女王盃は3頭前残りかという追い比べとなって、マルシュロレーヌはそこからでは届かないだろうという中団からまとめて差し切った。エンプレス杯では一転、サルサディオーネが緩みのない単騎の逃げに持ち込み、追ってくる馬たちには厳しい流れ。それをマルシュロレーヌは直線1頭だけ伸びて差し切った。そして今回は前述の通り武豊騎手の絶妙なスローの逃げをあっさりと差し切った。この完璧ともいえる勝ち方は、川田騎手のレースの流れを読む優れた判断もあってのことと思われる。
ただマルシュロレーヌが強さを発揮しているのは2000m前後の距離。JBCレディスクラシックとなると、今年は金沢競馬場が舞台で、小回りの1500m。これまでの横綱相撲というレースができるかどうか。
マイペースの逃げに持ち込んだリネンファッションは、3着のアッシェンプッテルには3馬身差をつけているだけに、これで負けたのでは仕方ない。勝った馬が強かった。
これまで中団より後ろからレースを進めることが多かったアッシェンプッテルは、好スタート切ったことに加え、ゆったりした流れになったぶん2番手を追走できた。ただ後方から直線勝負で結果を残している馬が、好位につけられたからといって、必ずしも同じような脚を使えるわけではない、というのが競馬の難しいところ。
メモリーコウは、スローに流れてどの馬も直線で脚が使えるような流れは合わない。昨年のこのレースで2着だったときは、逃げたマドラスチェックをプリンシアコメータが突く展開で、レースの上がり3Fが41秒5もかかる前半ハイペースだった。近走でも東海S、マーチSでともに3着と、牡馬相手にそれだけのレースをしていれば牝馬同士なら勝てそうなものだが、中央のダート重賞では2000m前後のコーナー4つのコースでもペースが緩むことがなく、メモリーコウはそういう流れで力を発揮するのだろう。牝馬同士のダートグレードなら、例えば逃げるサルサディオーネに何か競りかけていく馬がいるような展開になったときにチャンスかもしれない。