GI・9勝を挙げたアーモンドアイ(撮影:下野雄規)
アーモンドアイは世界的な一大牝系を築いているBest in Showの一族出身。同牝系からは歴史的な名馬や名種牡馬が多数出ており、アーモンドアイはこのうち、大種牡馬トライマイベストや、1984年の欧州年度代表馬El Gran Senorなどが出たSex Appealのファミリーラインに属している。
なおBest in Show牝系からはこのほかスピニングワールドやRedoute's Choiceなどが出ている。日本ではカジノドライヴやサブノジュニアが活躍し、近年では日本に種牡馬として輸入された欧州の快速馬シスキンなども同牝系の出身だ。この優秀なファミリーラインに、近代日本競馬のスピード能力の原点ともいえるナスキロ(ナスルーラ×プリンスキロ)を何本も潤沢に受け継ぐ種牡馬ロードカナロアを掛け合わせたのが繁殖牝馬としてのアーモンドアイだ。
アーモンドアイ(父ロードカナロア)にエピファネイア(母シーザリオ)を配合すると、血統表の中に再現される競走馬がいる。ロードカナロア×シーザリオ=サートゥルナーリアである。同馬もまた、アーモンドアイと同様、種牡馬としてのロードカナロアの強みを最大限に活かした配合。また、この血統構成においては、ロードカナロアの母父Storm Catと、シーザリオの持つNijinskyがニックス関係にあることも重要視したい。
セクレタリアトの全姉シリアンシーの一族出身で、ナスキロの塊ともいえるロードカナロアは、別種のナスルーラと非常に相性が良い。Special(Nureyevの母であり、Sadler’s WellsとFairy Kingの二代母)を持つ繁殖牝馬との配合でアーモンドアイやサートゥルナーリアに限らず、ステルヴィオ、レッドルゼル、パンサラッサなどを出しているほか、ナスキロ同様に黄金配合であるナスペリオン(ナスルーラ×ハイペリオン)の典型であるトニービンをハーツクライ経由で追加してトロワゼトワル、ケイデンスコール、ヴァルディゼールなどを出している。
種牡馬としてのエピファネイアも同様、母系にナスルーラを足すかたちで活躍馬を輩出している。キングマンボを合わせる配合からはデアリングタクト、クラヴェル、オーソクレースなど。トニービンを足す配合からはエフフォーリア、アリストテレスなどを出した。この傾向から鑑みれば、「ロードカナロア産駒の黄金配合」と「エピファネイア産駒の黄金配合」は似通っており、それらを併せ持つエピファネイアとアーモンドアイの配合は「ナスルーラの本数を増やす」という点において近代日本競馬の理想形ともいえる。初仔のデビューを心待ちにしたい。