新人の今村聖奈騎手(18)=栗東・寺島厩舎=が22日、新潟12Rで2番人気の
スカイナイルを1着に導き、JRA43勝目(ほか地方4勝)を挙げた。2019年に藤田菜七子がマークした女性騎手のJRA年間最多記録に、デビュー8か月目にして並ぶ快進撃だ。
ついに肩を並べた。ここまで7鞍を未勝利で迎えた12R。聖奈は2戦連続騎乗の
スカイナイルを2番手へ誘導した。最後の直線では早々と逃げ馬を抜き去り、最後まで相棒を鼓舞。後続に1馬身1/4差をつけて堂々とゴールを駆け抜けた。「自分は恵まれた環境の中にいて、勝利数の半分は馬の力で勝たせてもらっているところもあります。もっと胸を張ってうまくいったと言えるレースを増やしたい」。女性騎手の大記録に並んでも、謙虚な姿勢は崩さなかった。
先駆者の菜七子は年間43勝をデビュー4年目でマーク。しかし今村は「菜七子さんが記録された時と比べて4キロ減ですし、比較する値ではないと思います。まだまだ人間が粗削りなので、4キロ減がそれを補ってくれています」と受け止めた。菜七子の43勝は3キロ減で達成。自身は1年目での偉業にもかかわらず、優劣をつけようとはしなかった。
7月にはCBC賞を
テイエムスパーダで逃げ切り、重賞初挑戦にして初制覇。8、9月には2週連続で一節4勝を挙げるなど順調に白星を積み重ねたが、9月中旬から約1か月間、勝ち星に見放された。10月10日の1勝で復調。そこから、開催日は4日連続で1勝ずつを着実に積み重ねた。福永や川田らトップジョッキーの助言を積極的に請い、一歩ずつ努力を重ねてきたからこそだった。
新記録樹立へ、23日は再び新潟で7頭がスタンバイ。1Rの
ガルヴァナイズや3Rの
クラップサンダーなど、有力馬が顔を並べる。今後はG1初騎乗も大きな目標だが、「あしたもたくさんいい馬に乗せてもらっています。引き続き一頭一頭大切に向き合っていきたい」と、あくまで目の前のレースに集中する構えを貫いた。周囲のけん騒を尻目に、今村は決して我を失っていなかった。(石行 佑介)
〈面接で語った夢を胸に精進〉
また一歩、夢に近付いた。今から4年前―。競馬学校入学試験の面接に臨んだ今村は、一つの誓いを立てていた。
「歴史に名を刻めるジョッキーになりたいです」
真っすぐな思いが実り、狭き門を突破。入学後、面接官を務めた教官からも「俺はその言葉に揺さぶられた」と明かされた。それを聞いた聖奈は「覚えてくれていたんだ。それなら、口だけにならないようにしよう」と一層の精進を決意した。
その教官からは、デビュー時にも「お前なら(歴史に名を刻む騎手に)なれる」と鼓舞された。JRA新人女性騎手の最多勝利数更新、CBC賞での重賞初騎乗V。そして、女性騎手最多の年間43勝。周囲の励みも力に変えながら腕を磨いてきた18歳だが、これで満足するはずがない。夢への道のりは、まだ序章に過ぎない。(水納 愛美)