◆第39回マイルCS・G1(11月20日、阪神・芝1600メートル)
秋のマイル王者を決める第39回マイル
チャンピオンシップ・G1は20日、阪神競馬場で行われる。昨年連覇した
グランアレグリアが引退し王者不在の一戦。今年8月、1997、98年に連覇を果たしたタイキシャトルが死ぬ直前に取材した坂本達洋記者が、新たなマイル王者の誕生に思いをはせた。
希代の名マイラーが天国に旅立ってから、約3か月がたった。97、98年にマイルCSを連覇したタイキシャトルは、今年8月17日に老衰のため28歳で急死。フランスのジャックルマロワ賞を含むG1・5勝を挙げて、短距離馬としては初めて年度代表馬に輝いた栄光は色あせないだろう。この夏に牧場で元気な姿を取材していた記者は、1週間後の突然の訃報にぼう然とした。
しかし、それ以上に改めて驚かされたのは、その存在の大きさである。全国の競馬場などに設置された献花台には多くの花がささげられて、8月20日の新潟、小倉、札幌のメインレースは追悼競走の副題を付して実施された。おまけに手前みそだが、来年度の「報知競馬
カレンダー」の表紙も記者の撮影したタイキシャトルが飾ることになった。
そんな名馬とゆかりの深いG1は、やはり名マイラーが彩ってきた。連覇で引退の花道を飾った昨年の
グランアレグリアは記憶に新しく、ニホンピロウイナー、ダイタクヘリオス、デュランダル、ダイワメジャーなど6頭も連覇を達成。時として絶対王者が君臨するマイル界だが、今年は“王者不在”で混とんとした勢力図と言えそうだ。
タイキシャトル同様、芝マイル無敗なのが白毛の女王
ソダシ。札幌記念(5着)、府中牝馬S(2着)は黒星を喫したが、マイル女王の資格は十分だ。同じ4歳勢だと、前走のスプリンターズSは9着に敗れた
シュネルマイスターも、マイルなら一度も馬券圏内を外したことはない。まさに意地をかけた勝負気配を感じる。
タイキシャトルは3歳で初めて戴冠(たいかん)し、4歳での連覇につなげた。今年のNHKマイルC覇者の
ダノンスコーピオンと、前哨戦の富士Sを制した
セリフォスは、いずれも伸び盛りの3歳馬。ここから連覇、いや前例のない3連覇だって―。夢が広がるメンバーだなあ。歴史的名馬を継ぐ、新たなスターと出会いたい。(坂本 達洋)
◇今月2日に納骨 ファンから花が
この世を去ったタイキシャトルは、北海道新ひだか町の桜舞馬公園(
オーマイホースパーク)で多くの名馬とともに眠っている。このほど墓碑が完成して、今月2日には遺髪とともに納骨が行われた。当日は晩年のタイキシャトルを所有していた認定NPO法人「引退馬協会」の関係者、会員をはじめ、種牡馬時代に縁のあった馬産地の関係者などが集まったという。
余生を過ごした新冠町の養老牧場「
ノーザンレイク」は、ファンからの贈り物や花で飾られた祭壇を馬房に設けたままだ。スタッフの佐々木祥恵さんは「100以上ものお花が届いて、馬房からあふれるほどでした。楽しい思い出も作ってくれたし、お陰で私たちの牧場のことも知っていただけて、勉強になることも多かったです。本当にすごく愛された馬だと分かりました」と、感謝の気持ちは尽きないという。