第60回日本ダービーを制したウイニングチケット=1993年5月30日
「日本ダービー・G1」(28日、東京)
第90回を迎える23年の日本ダービー。これまでの節目ではセン
トライト(第10回)、タケホープ(第40回)など、当時の競馬界を代表する名馬が世代の頂点に立っていた。当連載では過去の節目の祭典を制した優駿をフォーカスする。2回目は第60回(93年)の勝ち馬ウイニングチケット。
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名は体を表す。「勝利への切符」という思いを名前に込められたウイニングチケットは、日本ダービーを勝つために生まれてきたと言っても過言ではない。1993年の第60回。ナリタタイシン、ビワハヤヒデとの3強対決は、今なお語り継がれる屈指の名勝負だ。
僅差の1番人気に支持されたのはウイニングチケットだった。皐月賞では早め進出が裏目に出て4着。それでも、ナリタタイシンを子供扱いした弥生賞での豪脚を知るファンは、直線の長い府中での直線一気を期待した。
ただ、レースはそんな予想とは全く違った。中団内めを追走すると、4角では最内を突いて2番手に上がり、直線半ばで早々と先頭に立った。皐月賞と同じか、それ以上の早仕掛け。内からビワハヤヒデ、外からナリタタイシンが追い詰める。万事休す。誰もがそう思った。が、抜かせない。柴田政人のこん身の右ムチに応え、もうひと伸びしたところがゴールだった。
当時44歳だった鞍上は、19回目の挑戦でのダービー初勝利。「世界のホースマンにダービーを勝ったことを伝えたい」。ダービーの称号はホースマンにとっての最高の栄誉-。ベテランのひと言は、一枚の勝利の切符をつかみ取る難しさとその価値を伝えるものだった。