ジャンプ重賞6勝の経験を生かし、馬の育成に取り組む山本助手
騎手時代、中山大障害を含む重賞タイトル6勝をマークするなどハードル界で活躍を続けた山本康志助手。中でも
メジロベイシンガーとのコンビで初の重賞タイトルを手にした05年の新潟ジャンプSは、飛躍への大きな一歩となったレースだ。
新潟ジャンプSの前2走でともに1番人気に支持されながら4着、8着と崩れ、6番人気に評価を下げたが「外を回る安全な競馬をしたのですが、いい結果が出せず、以前の競馬を見直したら前に壁を置いた時に走っていたので、あえて内の狭いところで我慢させました」。その戦法にきっちり応え鮮やかな逆襲を決めた。
11年にも
クリーバレンで2度目の新潟ジャンプSを勝利。さらに
クリーバレンの半兄
クランエンブレムで同年9月の阪神ジャンプSを制覇。「
メジロベイシンガーの大久保(洋吉)先生も
クリーバレンと
クランエンブレムの手塚先生も普段の調教で長めからしっかり乗られていたので、レースで安心して乗ることができました」と、平地とは違う障害馬への調教
スタイルの重要性を説く。
11年は暮れにも
マジェスティバイオとのコンビで中山大障害・G1を制覇。「前哨戦で初めて乗って2着だったけど、ゴール板を過ぎてからの余力がすごくて。4000メートル超えの大障害なら」と手応えをつかんだ。管理していた田中剛調教師も騎手時代に障害競走で大活躍しただけに「先生の馬ならやれるのではないか、と期待して騎乗できました」。障害ジョッキーとして大活躍の一年となった。
稀代の名ジャンパー、
オジュウチョウサンにも騎乗し2勝を挙げた。「気難しい面はあったけど乗り味はすごく良かった。あれだけG1を勝つとは驚いたけど」と振り返る。
障害で活躍する馬の資質について「息遣いのうまさ。これが上手な馬はスタミナが持続できる。それと慎重さですね。慎重だからこそ障害を分かって飛越するのでロスなく周れるし攻められる」と分析する。
騎手引退後は水野厩舎の調教助手として日々、汗を流す。「先生も元ジョッキーなので、僕も先生の考えを理解しやすいです」。さらに「騎手時代から馬をつくっていくことは好きだったし、その思いは変わらない。ジョッキーに乗りやすいと思ってもらえるよう、しつけることを心がけています」と熱意は健在だ。(松井 中央)