「宝塚記念・G1」(15日、阪神)
春G1ラストを飾るドリームレースを制したのは、7番人気の
メイショウタバル。武豊を背に完全にレースを支配すると、文句なしの逃走劇でG1初制覇。13、14年に連覇した父
ゴールドシップへ、同レース史上4組目の“親子制覇”というプレゼントを贈った。3馬身差の2着はファン投票1位の意地を見せた1番人気の
ベラジオオペラ。3着には10番人気の伏兵
ジャスティンパレスが食い込んだ。
逃げる逃げる。もう止まらない。さすがとしか言いようのない手綱さばき。武豊とピッタリ呼吸を合わせた
メイショウタバルには、勝利への道筋以外見えていなかった。
まさにレジェンドの独壇場だった。スタートを決めると、二の脚を利かせてスムーズな形で先頭へ。そこからは焦ることなく、じっくりと歩を進めた。前半5Fで刻んだタイムは59秒1。「これ以上速くも、スローにもしたくなかった。ちょうどいいくらいだった」。ベテランの手腕が光る。
抜群の手応えを残したまま直線へ向くと、荒れた馬場も全く問題なし。ゴールへ向かうにつれて、その迫力は増す一方だった。「3コーナーにすごくいい感じで入れて、馬が少し
リラックスしてくれた。そこが大きかったかな。本当に涙が出るほどうれしいですね」と勝利の味をかみしめた。
毎日杯や神戸新聞杯など、勝つ時は鮮烈。ただ、暴走気味に飛ばして17着と撃沈した皐月賞のように、負ける時も派手。常に課題は山積みで、その最たるものが“折り合い”だった。その点で進境を見せたのが、武豊と初めてコンビを組んだ前走のドバイターフ。新しく装着した
シャドーロールの効果もあり、落ち着いた走りで世界の強豪相手に堂々と渡り合った。そして今回、「折り合い過ぎているわけでもなく、いい感じで折り合いがついていました。タフなレースだったけど最後まで本当によく頑張ってくれた」と心の底から相棒をたたえた。
幼少期から親交の深い石橋師とつかんだ栄冠。検量室前には、満面の笑みで力強く抱擁を交わす2人の姿があった。「子どもの時からずっと一緒に競馬を見ていましたからね。いつか一緒に勝てればいいな、ということも何度も話していました。一つの夢がかないました」と喜んだ。さらに松本好雄オーナーとは、父・邦彦氏の時代から続く長い縁がある。「メイ
ショウの馬で、石橋調教師の馬で勝ちたい気持ちはすごく強かったです。人がつないでくれた、馬の縁。馬がつないでくれた、人の縁。競馬の素晴らしさを改めて感じました」としみじみ語った。
本格化を遂げた
メイショウタバル、そして、その能力を引き出した武豊-。新たな強い絆で結ばれた人馬が、さらなる高みへ
ノンストップで駆け上がっていく。