20日に今年の函館開催が終了。リーディングは横山武が獲得したが、今夏の函館で存在感を示した若手ジョッキーがいた。デビュー3年目の小林美駒騎手(20)=美浦・鈴木伸=だ。函館で9勝をマークし、今年は早くも昨年の19勝を上回る21勝を挙げている。
 好調の要因を聞くと、「函館は普段と違った環境で、関西の人とも交流があります。それが大きいですね。関西馬にも乗せてもらい、本当にありがたいです」と説明する。函館は滞在競馬となるため、レースだけではなく、普段の調教や追い切りにも騎乗する。そこでトレセンよりも深いコミュニケーションを取ることができる。ただ、それだけで騎乗数が増えることはない。小林美駒はもともと積極的な騎乗
スタイルだったが、今夏の函館ではその意識がより強いように思う。それに伴って結果が出るようになり、騎乗依頼が増えている。関係者の評判もいい。
 「減量が4キロあることが自分のアピールポイントなので、それがうまく競馬につなげられていると感じています」と自己分析する。最大のセールスポイントである減量を生かすためにはどう乗ればいいのか。しっかりと考えた上で実戦に臨んでいる。それが徹底しており、強気の騎乗に表れている。
 タイトなコース形態の中でトップジョッキーたちがせめぎ合う函館競馬。ここでの騎乗経験も飛躍の要因の一つだ。「ローカル競馬場ですが、一流ジョッキーが集まっていますし、あまり一緒に乗ることのない関西の騎手もいます。いろいろなことを聞けるのは大きいです」。厳しい環境で騎乗することで経験値は上がり、先輩から貴重な意見をもらえる。それがスキルアップにつながっている。
 記者が小林美駒の函館での騎乗を見ていて、印象に残った勝利が二つあった。一つは
テイエムタリスマで制した13日の噴火湾特別だ。「特別で勝てたことは自分の自信にもつながります」と手応えを語る。減量特典のない特別競走になると極端に騎乗数が減少するなかで、しっかりと結果を残した。
 もう一つは
モリノアミーゴで制した19日の函館6R。減量を生かして先行する
スタイルではなく、道中で脚をためて絶妙なタイミングできっちり差し切った。「自分なりにベストの騎乗ができたと思っています」と振り返るように、完璧な騎乗だった。節目のJRA通算50勝に到達して、ひと皮むけた印象を受けた。
 今年の函館について、「もう少し成績を上げたかったという気持ちはあります」と現状に満足していない。「勝つことは重要ですけど、勝ち方にもこだわっていきたい」と高い意識も持っている。今週から騎乗する札幌、そして秋競馬でもブレークしそうな雰囲気がある。あと、これは記者の個人的なものだが、同じ名字の“小林”だけに、勝手に親近感を抱いていて、勝手に応援している。(デイリースポーツ競馬担当・小林正明)